楔
この頃病気の進行が早くなってきたのか、階段でつまずいたりすることが多くなった。
話しかけても「うん」とか「ああ」とかしか言わなくなった。
元気がない。
昔はあんなに元気な人だったのにと、昔と今を比べる。
比べたって病気の進行を抑えられるわけではない。
手術は確かに成功はした。
だから今まで普通に暮らしてきた。でも…
やっぱりあの手術は進行を抑えるためであって、完全に治したわけではない。
「大丈夫?」
「俺はもう駄目なんだよ」
魔法が解ける時期が来たのだ。
「約束したじゃないあなたの側にいるって…あなたを一生支えるって…忘れちゃったの?」
あなたの側にいるって決めたんだから…だから私はあなたと結婚したの
「あなたが着いてくるなって言っても、私着いていくから」
私はそう言ってトウワの手をギュッと握りしめた。
離れないようにギュッとギュッと強く…
「…強情なやつ。」
フッと、また昔のように意地悪く笑った。
それがなんだか懐かしくて涙が出た。
「お前は俺の側で笑ってればいいんだよ」
そう言って瞼にキスを一つ落とした。
end
難しい…
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