朝の出来事

 

「いってらっしゃい」

夜な…じゃなくて、朝に弱いトウワを起こして送り出す。
今日はステラで仕事があるようで、私もついて行きたかったのだが、駄目だと怒られた。

いくら手術が成功したからと言っても、やっぱり心配なわけで…


「本当に大丈夫?」


「お前に心配されなくても行けるよ。行ったことがないところに行くわけでもないからね。それに、今日は家のことしなきゃってぼやいたのはお前だろ?」

聞かれてた…
この頃トウワの手伝いで家のことがきちんとやれてない。
布団だってたまには干したいし、トイレもピカピカに磨きたい。 

「じゃあ、行ってくるから。」

「うん、いってらっしゃい」


心配だけど、今日はトウワの優しさに甘えよう。


「ほら忘れてるよ」


トウワはいっこうに動かない。ただ、じっと私を見ている。

「忘れ物はないと思うんだけど…」

何か入れ忘れたかな?お昼は外で食べるとか言ってたけど、トウワのことだから…と一応サンドイッチを入れておいた。


「いってらっしゃいのキスは?」

「き、キス!」


「何をそんなに慌ててるの」


クスッとトウワは笑った。

確かに新婚だけど…でも、こうして改めて言われると恥ずかしい。



「わ、私からするの?」


「もちろん、俺からしてもつまらないからね。ほら、早くしてくれないと遅れちゃうよ?」


いいの?と意地悪く言う。  

私は覚悟を決め、トウワの頬にチュッとキスをした。


「し、したよ?」


「頬じゃないでしょ、ここ」


トウワの指が私の唇をなぞった。

「良い顔…俺が帰ってくるまで良い子で待ってるんだよ?それと、次はちゃんと唇にしてよね。」


「つ、次って!」


今日だけじゃないの!?恥ずかしくてたまらない。


「出来たら早く帰るよ。じゃあね」


私はボーッとドアを見ていた。気づいたら30分経っていた。


「布団干さなきゃ!」


私は急いで布団を干しにベランダに向かった。





end
20110618

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