に
「プリンを…二つ」
綺麗にケーキが並ぶショーケース。何故プリンを買ったかは分からない。
ただ、なんとなく家に帰ってから気兼ねなく食べられると言う理由があるからかもしれない。
「プリンですね」
そう言って店長らしき女性はプリンを二つとり箱に入れた。
(なんだ、彼女じゃないのか)
少しがっかりしたが、まあいい。彼女は他の客の相手をしている。
時たまみせる笑顔が眩しくて、それに自分にはない若々しさがある。
これは、もう… 完全に落ちた その日を境に私はケーキ屋に通うのが日課になった。
我ながら馬鹿だと思っている。彼女と自分じゃ生きている時間も生活している空間も違う。
自分は毎日会社に行って、彼女は多分学校に行って友達と遊ぶ。
きっと恋人もいるだろう。
こんな寂しい自分には合わない遠い存在。
こうして二つ買ったプリンも、自分で食べる。
いつかは彼女のような笑顔を私に向けてくれる人が現れるのだろうか?
(夢物語は見ないに越したことはないな)
無い物ねだりをしてしまう。 さあ、家に帰ろう。店を出て、ちらりと振り返ると彼女が一瞬笑いかけてくれたような気がする。
(気のせいか)
気のせいだとしても、嬉しいと思ってしまう。
この気持ちが俗に言う恋と言うならば、私はその気持ちを胸にしまっておこうと思う。
end
20110508
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