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片付けは楽なもので、ただパソコンを彼の下に届けるだけのものだった。


「失礼しまーす」


控え目にノックした後、彼がドアを開けてくれた。


「すまなかった、急に指名したりして。だが、どうしてもお礼を言いたくてな」


「お礼ですか?」


はて、何かお礼なんて言われるようなことをしただろうか?彼と私は常連さんと店員と言う間柄だ。


「昨日のマドレーヌを食べたおかげで今日の講義が上手くいった。君のおかげだ。」


「そんな…あのマドレーヌはもともと売れ残りですし…」


何もお礼なんて言われることじゃないのに、律儀な人だ。 

「葵さん、学長がおよびです。」


ドアが少し開けられ、事務の人が顔をだした。

「わかりました。すぐに」


そう言うと、パタリとドアがしまった。


「一応君には名刺を渡しておこう。それではな」


彼は名刺を私に渡し、部屋を出て行ってしまった。


「蒼グループ監査役、葵皇毅か…凄い人なんだ。」


私は名刺をお財布の中にいれた。この中にいれておけば無くさないだろう。


「あっ!私も急がなきゃ!」

友達を待たしていることに気づき、大急ぎでカフェテリアに戻った。





end
20110731



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