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みんな話を聞こうと前に座る。だから、前の方の席は全部埋まっていた。


「人気なんだね…」

チラホラと同じ文学部の女子も見かける。


私達は一番後ろの窓側に座った。友達は席に座ったと同時に机に突っ伏して寝てしまった。


「起こした方がいいのかな…」
でも、この前起こしたら全力で怒られた。一体学校に何をしに来ているのかよくわからない。
しかも寝てるのに成績は良いという…不思議だ。

そして開始のベルが鳴った。

入ってきたのは長身で、スーツをビシッと決めた男性。


「あれ…?」


入ってくるなり女子達が歓声を上げた。  
「静かに、私は蒼グループから来た葵皇毅だ。君達には有意義な時間をプレゼントしよう。」

そう言って彼はスクリーンを使って話し始めた。


あの人は、もしかするといつもプリンを買っている男性?
昨日はモンブランを勧めたところだ。


「……」


その人がもし、いつもの人だったとして、私はどうしもしない。私はずっと窓の外を見ていた。


ただ、話は聞いていた。

スクリーンを見ても難しい用語ばかりで嫌になってしまうから。

でも、彼の声は好きだった。
 

ふと、前を向いた時彼と目があった。まるで時間が止まったような気がした。



その時、タイミングよく終わりのベルが鳴った。


「…一番後ろの窓側の女性に片付けをお願いしたい。」


彼はそれだけ言うと教室を出て行ってしまった。


ざわつく教室に私はただ、ボーッと彼がさっきいた場所を眺めた。


「杏里がんば!」

友達は起きていたようで、私の肩をポンと叩き席を立った。

「カフェテリアで待ってるから。早めに帰ってきてね」

そういい、行ってしまった。







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