「またクラヴィス様の所に行かれるのですか?」
水の館の外でハープを弾く手を止め、私に聞いてきた。
「もちろんです!だから仕事くださいリュミエール様!」
私は水の守護聖であるリュミエール様の書官だ。これでも守護聖様達の人望は厚い。
ただ、一人を除いては…
「見ているだけでは駄目なんですよ?」
「わかってます。今日こそはクラヴィス様に書類を渡してきます。ちゃんと…本人に」
そう、私はいつもクラヴィス様に会う前にクラヴィス様の書官に書類などを渡す。
だから、私は面と向かってクラヴィス様と話したことはない。
(だっていつもクラヴィス様不機嫌なんだもん…)
ふぅとリュミエール様はため息をつき、私の頭を撫でた。リュミエール様は私の不安を取り除こうと私の頭を撫でる。いつもだ。
子供扱いされているみたいであまり好きではない。
でも、そんなこと言えるはずがなく、今日もこうして撫でられる。
「そんなパセリに今日良いことがありますよ。」
「いいこと?」
「ええ、いいこと。もうすぐ来ますからいい子でお待ちくださいね。」
はて?いいことって何だろうか?
リュミエール様はニコニコ笑っている。誰かお客様が来るのだろうか?でも、今日は何も予定はない。
「リュミエール、弾いてはくれぬか?」
「お待ちしておりましたよクラヴィス様。」
は?いや、今何て言った?
嫌な汗が垂れる。振り向くな、振り向いちゃダメだ。
夢だ夢だ夢だ…
「ク、クラヴィス様…ハジメマシテパセリデス。」
「ふふっ、パセリは恥ずかしがり屋さんなんですよ。さあ、クラヴィス様こちらへ」
うむとクラヴィス様は私の横を通り抜けた。
やっぱり今日もクラヴィス様は美しかった。
「パセリは私公認のストーカーなんですよ。」
何を話し始めるのリュミエール様は!?
「ストーカー?なんだそれは」
「聖地の外で流行っている言葉です。何でも、何でも屋だとか」
え?リュミエール様、全然意味が違うし、別に聖地の外で流行ってる言葉なんかじゃない。
「何でも屋か…覚えておこう」
クラヴィス様、覚えなくていいですよ、本当。なんて、言えなくて普通に「はい」と返事をしてしまった。
end
20110404
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