「いつまで寝ているつもりだ」
「いっ…」
誰かに顔を蹴飛ばされ、私は目が覚めた。
「もふもふお姉ちゃん大丈夫?」
「りんちゃん…」
顔を上げれば、天使が私に微笑みかけていた。私のことをこんなに心配してくれるなんて、本当にりんちゃんは可愛い。
「とっとと起きろ、また蹴飛ばされたいのか」
「もちろん喜んでー!あ、イタッ…」
本当に蹴飛ばすなんて…さすが殺生丸。
「蹴飛ばされたくなかったらさっさと起きるんだな」
はいはいとまだ若干痛む足や手に鞭をうち立ってみる。これでも私は一族の中では強かったんだから…だからこれくらい二、三日おとなしくしていればなんとかなるはず。
まあ、治らなかったらかごめちゃんに看てもらうのもいいかな?
なんて考えてみたけど、今回のこの怪我は私のせいでもある。確かにあの男の言うことが正しい。私は生ぬるいところにいすぎたのかもしれない。
戦が終わり殺生丸を探していたあの日々は殺伐としていたのだから。
「えっ!?ちょっと!」
ふわりと私の体が持ち上がり、私は宙に浮い…じゃなくて!
「何があったかは知らぬが、今は何も考えないことだな」
そう言った後は無言で私をお姫様だっこしながら、歩いている。りんちゃんは、後ろからひょこひょこ着いてきて可愛い。
「殺生丸なら肩に担ぐと思った」
意外にロマンチスト?ま、そんなわけないよね。
「なら、投げるか」
「ちょ、冗談で…」
ほーいと投げ出され私の時間が止まったかのように思えた。けれどそれは一瞬で声も上げられないほどだった。そして気づいたときには水の中にいた。
「もふもふお姉ちゃん!」
「まさか本当に投げるなんて…あり得ない」
でも、そこがいい!
まあ…そんなこと言ったら置いていかれると思うけどね
「着物がびしょびしょ…」
「ここは癒しの泉って呼ばれてるんだって!殺生丸様が言ってたよ!」
「殺生丸が…?」
ニコニコと私に笑顔を向けるりんちゃん。その傍らには誰もいない。
どこへ行ってしまったのだろうか。
「着物干しとくね!」
ありがとうと言って私はりんちゃんに着ていた着物を渡す。りんちゃんは着物を木の枝に干す。
「もしかして、気を使ってくれたのかな?」
殺生丸なら「くだらん」とか言いそうなのになあ。
そんなことを思いながら水浴びをした。
20120702