05
結構レベル高い。特に、あの時月島の所に来てた2人。すごい速攻。明るい色の髪をした、確か日向くんと言ったその子は小さいのによく飛ぶし、速い。でも何より凄いのはセッターの方。私でも鳥肌が立つくらい正確なトス。完璧な状況判断。
結局見入ってしまっていて、私としたことが仁花ちゃんに向かって飛んでくる流れ玉に反応できなかった。日向くんが弾いてくれて、清水先輩が心配して駆け寄ってくれる傍らふとコートの方を見ると、月島がニヤけた顔でこっちを見ていた。全くイチイチむかつく奴!とりあえず月島には睨み返しといて、先輩に謝った。
「すいません、ち ょっと見入ってしまっていたみたいで・・・。」
「わ、わたしも、体育じゃないバレーこんな近くで見るの初めてでして・・・!凄い迫力です・・・!!」
「ウチは攻撃力なら県内でトップクラスだと思うよ。」
「うへーっ。」「そうでしょうね・・・。」
「?!憂ちゃんバレー分かるの?!」
「う、うん。まぁ・・・転校する前やってたからね。だけど今はちょっと・・・。」
そう言いながら右腕の包帯をチラつかせると、仁花ちゃんと先輩が察して「怪我?」と聞いて来たので、「まぁそんなとこ」と言って苦笑いしておいた。
「烏野はね昔は全国大会行けるく らい強かったの。 でも最近は”落ちた強豪 飛べない鳥”なんて呼ばれてた。 今年こそ行くんだ、全国の舞台・・・!」
「!!」「凄いなぁぁ私とは違うなぁ・・・!」
速攻コンビを見たときから只物じゃないとは思ったけど、まさかこの学校の男子バレーがそんな所だったなんて・・・!別の形だけど、どんどん近づくかつての目標に、私は固唾を飲んだ。
それから練習が終わって片付けを手伝った後、急遽、扇西高校っていう地元の高校と練習試合が入ったことが知らされた。あとは青城って高校の話。練習中に少し聞こえたりしたけど、どうやら最近あったIH予選で 青城高校に負けた悔しさが今の烏野男子バレー部のモチベーションらしい。女子バレーとはまた違う大きな掛け声で部活を終え、私と仁花ちゃんは制服に着替え、自分も着替えて送ってくれると言ってくれた清水先輩を待っていた。
「いやー凄かったなぁみんな。って、私この程度の感想しかでないんだけど、憂ちゃんから見てどうだった?」
「そうだな〜簡単に言うと、結構強いのに面白いところだなって思ったよ。」
「面白い?」
「うん。私もこんな風にバレーできたら良かったのかな・・・。」
そんなことをうっかり言っちゃったときだった。私たちが立っている所の後ろにあった窓から、顧問の 先生とコーチの会話が聞こえてきた。正直ナイスタイミングと思ったけど、東京遠征のバスが取れないかもしれないと言う芳しくない内容だった。ふと仁花ちゃんの様子を伺うと、なにか思うところありそうな感じでずっと窓を見ている。何か話しかけた方がいいのかな・・・なんて考えていると、本日2度目、大きな声に遮られた。
「谷地さん!朝日奈さん!!マネージャーやる?!よね!?」
「「?!」」
「ヘイ!1年ガールヘイ!!」
「是非烏野バレー部に入ってくれたまえよ。」
「君らがいると清子さんがよく喋る。」
何なんだこの先輩達・・・。これが男子のノ リなのか・・・。
そう思って引きつった顔をしていたつもりだったんだけど、絡んできた2人の先輩の内、まず坊主さんの方が急に近づいてきてこういった。
「朝日奈くん、君はなかなかの美人だな、潔子さんほどではないが。」
「は、はい?!」
「谷地さんも潔子さんとはまた違ったタイプでいいな、清子さんには適わないが。」
「ファ?!」
「そんな勧誘があるか馬鹿!」
「ごめんねぇばかでねぇ全く。」
固まってる私たちをまた別の先輩が助けてくれた。それでもすぐに反応できないでいた私よりさきに、硬直が解けた仁花ちゃんが答えた。
< /div>「い・・・いえ、その、うれしいです。 私自分から進んで何かやったりとか、逆に何か必要とされたりすることってなかったので・・・。 劇とかやっても絶対その他大勢の1人なんです。村人Bとか、木とか。 だからバレーの経験も知識もない村人Bの私を清水先輩があんなに一生懸命誘ってくれて凄く嬉しかったです。 でもやっぱり私ではお役にーーー」
「わかるぜその気持ち。」
「俺も潔子さんに"君からお金騙し取るからついて来て"って言われても付いていく。」
「男らしいぜ龍!!」
「また田中が何か言ってるなぁ〜。」
「ははは・・・。」
仁花ち ゃんの言うことに聞き入ってすっかり硬直はとれたけどまたこの先輩達は・・・。思わず苦笑いした声が漏れると、同じ感想を持って呆れていた髪の色素が薄い先輩が私に気づいて話しかけてきた。