01
僕のクラスに転校生が来た。
「東京からきました、朝日奈憂です。向こうではバレーボールをやっていました。よろしくお願いします。」
そう言って短い自己紹介を終えた彼女の右腕には、包帯が巻かれていた。
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「はい。じゃあ朝日奈の席はあそこね。」
先生が指したのは窓際の1番後ろ。
長身で色素の薄いメガネ男子が前に座っている席だった。
黒板が見えるか不安だけど、1番後ろの隅というのはありがたい。
私は好機の目に晒されながら教室を前から後ろへと移動してその席に座った。
包帯を隠す気は無い。
少しでも私の自己紹介を聞いてくれていた人なら、バレーで怪我をしたのかなと思うだろう。
実際、違わないんだけどね。
その後、私という転校生が来たこと以外都会となんら変わらない朝のHRが終わって数人の男女が私と話をしに来てくれて、1限2限3限目が終了し4限目となった。
4限目は数学の時間だった。
前の休み時間に話をしてくれた子の中に嫌だなと言っている子がいたけど、受けてみると確かに他の授業と一線を駕している。
難しいとか厳しいとかそういうんじゃない。
どんな問題もなるべく生徒に解答させる先生で、尚且つ先生が指名するのは最初だけ。2回目からは解答し終わった生徒が指名する形になっている。
これは辛い。
仲のいい人しか当てられないし、指名された人が仲のいい友達なら、その人が指名された瞬間自分も緊張しなくてはいけない。
厄介だなぁ。
趣味の悪い先生だ。
まだ仲のいい友達と言える人がいない私は素直にそう思ったが、逆に私は指名されないかもしれないと言う安心もあった。
別に答える分には何も困らないのだけど、次に誰かを指名するのに困る。
まぁ、当てられないでしょ。
そう思えたのもつかの間…問題を解いた後、次の人を選ぶのに女の子が迷っていると、先生はおもむろに名簿らしきものを見てこう言った。
「なんだ、このクラスには転校生がいるのか。」
あぁ……これは当てられるパターン…。
迷っていた女の子が私の方をみて申し訳なさそうな顔をした。
「じゃあ次の問題は転校生にやってもらおうか。えーと…朝日奈?」
「はい。」
「できるか?」
「大丈夫です。」
次の人を当てなきゃならないこと以外はな!
私は問題なく問題を解いて先生に「おおー。」などと言われた後、とりあえず次の人当てなければいけませんかと聞いた。
「転校してきたばかりで誰が誰だか分からないかもしれないが、ここで仲良くなっておくのも手だろ。」
と、なんか自分が上手いことやったみたいな感じで言われた。
私はとりあえず先生に名簿を借りて見る。
適当に当てるより、少し珍しい名前の人を選んで、ああ珍しい名前だから選んだのかなと思ってもらうようにしよう。
珍しい名前…珍しい名前……。
土地柄の違いか、珍しい名字は沢山あったから名前で決めようと思い名前を見る。
見つけた、珍しい名前。
「じゃあ、月島蛍(ほたる)ちゃんで。」
私がそう口にした瞬間、教室が凍りついた。