貴志部中編

Take A Fancy



試合はいい勝負だった。
だけどやっぱり全国大会で優勝した雷門は強くて、しかも今は復帰した神童くんがいる。後半からの雷門の勢いが凄まじく、試合は雷門の勝ちで終了した。

私もかなり試合に夢中になっていて、興奮を抑えきれない観客達が騒いで帰る中、試合後のことを何も考えていなかったことに後悔してた。

このまま帰っちゃうと来なかったのと同じようなものだし、だからと言って自分から行くのも嫌だし…あーもうどうしたらいいんだろう!

今選手達は監督の元で指導後、着替え等をしている所だろう。
いつも友達の恋話とかを一方的に聞かされていて、浮いた話の一つもなかった私が今男の子を待っているなんて、しかもサッカー全国レベルチームのキャプテンだなんて、凄く変な感じ。ざわざわする。

とりあえず適当に座って、なんとか一言、来た証明のためにも挨拶をしていかなければとその方法を考えていると急に視界が陰った。後ろに誰か立っている。
このシルエットは…


「…倉間。」

小さいシルエットだったからすぐ分かった。もう帰ってもいいのか、ユニフォームからジャージに着替えて鞄を持った倉間がいた。


「…話は神童から聞いた。木戸川のキャプテン、趣味悪いんじゃねぇの?」

「うるさいよ、ちび倉間のくせに。」

「はぁーだけどお前になー浮いた話かー。」

「…何よ。」

「いや別に……それより神童から伝言頼まれた。」

「………。」

「まあ、神童と言うより木戸川のキャプテンからだな。」

「うー…。」

「校門に来てくれってさ。」

きた…。
ついに来てしまった。対面の時が。自分から会いに行かなくてすんだのは良かったけど、確実に会う、という事情が緊張させる。


「ったく神童もわざわざ俺に言わせるとか、性格わりぃな…。」

「うぅ…倉間何か言った?」

「なんでもねぇよ。早く行ってやれよ、アホ!」

「ひど!人がこんなに緊張してるのに〜!」

「いいから、行けって!」

倉間がそう言って座ってる私の背中をつま先で蹴ってくる。ひど過ぎる幼なじみだ。私は覚えてろよーと捨て台詞を吐いて、重い足取りで校門へ向かう。
あー緊張する!なんだろう、嫌じゃないんだけど!だけど何か嫌だ!あるよねこういうこと。
今までの自分が変わっちゃいそうで、でも変えなきゃ行けないって心のどこかでは分かってて…でもきっと相手はもっと勇気を出しているに違いない!
校門へ向かう短い距離で色んなことを考えた。考えたら、少し心が穏やかになった気がする。
大丈夫、今日はいつもより髪をきちんと整えたし、最近少し痩せた!
大丈夫、大丈夫。


校門はとっくに視界に入っていた。試合があったためか、休日なのに人が多い。かなり多い。何故だ。
そのためパッと見で木戸川のキャプテンさんは確認できないけど、変わりにほとんど女の子で構成された人だかりを見つけた。



何かと思ってその輪の内を覗くと、あの時財布を渡したぶりに間近で見る、青い髪があった。


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20120503
焦らしてすみません
倉間出したかった



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