貴志部中編
Take A Fancy
しばらくの沈黙があってから真っ赤になって動揺する私に、神童くんまで動揺していた。
「あの、その、ごめん!そんなに困らせるつもりは…えっと…。」
「わわわ私こそなんかごめ、ごめんね!」
私は一体深呼吸をして少し落ち着いた所で神童くんに尋ねた。
「私が財布を拾った子はサッカー部なの?木戸川の子?」
神童くんとあの青い髪の子が一緒にいる所は見たことがない。サッカー部の人も大体把握しているし、もしあの子がサッカー部で自分の試合を見て欲しいと言うことであれば他校、そして木戸川の人だ。
「察しがいいな。木戸川清修のキャプテンだ。」
「キャ、キャプテン?!」
木戸川清修といえば、雷門と同じサッカーの強豪校。確か昨年、雷門との決勝戦に勝って優勝したはず。
まさかそんな大物だったとは…私なんかじゃ釣り合わなすぎて逆に行きたくない。
「じゃあ俺は部活があるから。来てくれると嬉しい。」
「あう…。」
なんだか神童くんに来てくれると嬉しいとか言われたみたいで戸惑う。
神童くんは部活に行ってしまった。私はしばらく女子の質問攻めにあう。
―――結局来てしまった。
だって来なかったらなんだか嫌な人になりそうで!
昨日は散々迷ったけど、もうどうにでもなれという感じで私は今雷門のサッカーコートの脇にいる。
どこから聞きつけるのか、ギャラリーが結構たくさんいて、これなら見つかることもないかも、大丈夫なんて思ってガッツポーズをとった瞬間。
「水無月?」
「あ…倉間。」
さっそく見つかる。
「なんだお前、珍しいな。」
「あーいや、その、たまには幼なじみの倉間の試合でも見ようかと…。」
「嘘つけ全国決勝戦に誘っても来なかったお前がわざわざ母校でやる練習試合を見にくるかよ。」
「あははー…。」
「で、何で来たんだよ。」
「そ、それは……?!」
話と一緒に目も反らしてなんとなくサッカーコートを見たら、きっと、多分、いや確実に木戸川清修のキャプテン、私が財布を拾った人と目がコートにいて目があってしまった!
びっくりしてとっさに倉間を楯にする。
「ちょっお前なんなんだよ!」
「いいからいいから!あーもう倉間小さくてあんまり意味ない〜…。」
「ひっぱたくぞお前。」
「とりあえず私向こうとか行くから!倉間も早くコート行った方がいいよー!」
走りながら叫ぶ私を追うように倉間が怒る声が聞こえたけど気にしない。
私は違う観戦場所を探してその場所に一旦落ち着く。
さっそく発見されたことに焦ったけれど、あの時目が合ったあの人は私が財布を拾ってあげた時みたいに弱々しい感じは一切なく、むしろ自信に満ちあふれていて、赤いユニフォームがかっこよかった。
―――――――――――
20120424
これもう連載にしようかな
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