「ノート、見せてくれないか?」
3時間目が終わって、さて次の時間で使う教科書を用意しようかと思った矢先、急に剣城くんに話かけられた。
思わず身構えた私に、剣城くんは目をしかめて「なんだよ」と言った。
「ご、ごめん…。」
なんで身構えてしまったのか、それは多分なまじ中学に上がる前から今とは全然違うお互いを知っているからだろう。
私が謝ると剣城くんは元から鋭い目をますます細めた。
「…さっきの時間のノート見せてくれ。」
「えっ?あ、うん、いいけど…。」
なんで私?と聞こうとしたけれど少し考えて聞くのをやめた。
1年サッカー部のクラス事情は、4人固まってる松風くんのクラスと白竜のクラス、輝くんのクラス、そして私と剣城くんのクラス。
そして剣城くんが自分のクラスの男子と馴れ合っている所をあまり見たことがない。
それで私なのか、そう考えた。
「剣城くん寝てたの?」
彼がたまに舟をこいでいるのを私は見る。
頑張って起きていようとする所が彼らしい。
制服はあんななのに。
今回は耐え切れずに寝てしまったのか、剣城くんは少し照れて目をそらした。
「練習お疲れ様。」
私がそう言ってノートを渡すと、一言お礼を言った剣城くんはその場を去ることをせずにじっと私を見た。
「な、何かな…?」
「…白竜の奴は勉強ができるのか?」
「?白竜は結構できるよ。白竜がどうかしたの?」
「いや…サッカーではいいライバルだが、勉強はどうかと思っただけだ。あいつはアホだからな。」
「あはは、そうだね、白竜はアホだけどなんでもそつなくこなすからサッカー以外でも剣城くんと色々競えると思うよ。」
「ふっ、奏は白竜のこと大好きだな。」
「?!ちょっちょっと剣城くん急に何言って…!」
「じゃあありがたくノートは借りていく。」
「もうっ!」
結局からかわれてノートを掻っ攫られた。
でも剣城くんとこんな風に話せたのは多分初めてだ。
私は顔を赤くしながら、これも白竜のおかげかなーなんて思った。
あと1時間授業を受ければまた白竜に会える。
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20120313
ちゃんと白竜以外の夢書きたいと思います…。
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