「覚えてたんだね。」

「……………。」

白河くんは横を向いて黙った。
前髪で顔が隠れていて表情が読めない。
便利だなぁ。

正直に話したら幻滅するだろうか。
どちらにしろ今本当のことを吐露する勇気はなかった。

「あの時は、ほら、1軍入りのお祝いみたいな…そんな感じ。」

「……………。」

はぁ。
またバレてるんだろうな。
って思っていることすらバレてそう。

「ほら、白河くん、2人に呼ばれてるよ。」

「…とりあえず借りは返したつもりでいるから。」

「はいはい。」

タイミングよく遠くで成宮くんが白河くんを呼んだのを利用して会話を終わらせた。
貸し借りの比重で言うなら、私の方が倍は助けられたような感覚だ。
ありがとね、と小さい声で言ったけど無反応。
かと思いきや、扉の前の小さな階段を下りた後、振り返って声を出さずに口を動かした。

多分、また”バカ”って言った。

おっしゃる通り。
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