昼休み逃げ続けること3日間。
今日は旧体育館で練習予定の日だ。
3日間連続で成宮くんは昼休みに私を探しにきたらしい。
流石に学校のアイドル中のアイドル、聞いた話だと関東一の投手である成宮くんが探してる人間ということで何か話題になりかけているので、流石にここまでくるとこれ以上の騒ぎになる前に訳を話す覚悟はできていた。

私は旧体育館での練習の日は普段教室に通う時の移動時間分の余裕があるので、放課後に宿題や予習を済ませてからゆっくり練習に行き、帰宅後はすぐ休むという生活リズムでバランスを取っていた。
この日も宿題と予習を終わらせた17時頃に通った野球部のグラウンドでは、ユニフォームを汚した選手たちが各々練習に励んでいた。

(あのユニフォーム、自分たちで洗うのかな…。)

なんかそこら辺の女子より家事とかできそう。
私も一人暮らしを始めた当初はてんやわんやだった。
もし今日本当に成宮くんたちが来るとしたら憂鬱だけど、彼らと同様、練習も家事もしっかりしなくては。
そんなことを思いながら旧体育館へ向かった。

――――――――――――――――――――――――――

練習中は何もかも忘れられるものだ。
あまり考えすぎない所があなたの強みでもあり弱みでもあるってコーチに言われているっけ。
最近極めていたフープの技を決めたところで、あの時と同じ小さな拍手の音がした。
おそるおそる振り向くと、しかめっ面の成宮くんがいた。
あと半裸のカルロスくん、バカ発言(声に出してはいないけど)から話をしていない白河くん。
他の人をぞろぞろ連れてこられるのが最悪のパターンだったので、とりあえずほっとした。

「いい度胸じゃん、俺から逃げ回るなんて!カルロは食堂で会ったっていうし!変装してるんだって?!」

い、勢いがすごい…!

「へ、変装っていうか…。」

「もったいないよな、変装やめたら人気でるぜ。」

「でてもらっちゃ困るから変装してるわけで……。」

「やっぱ変装なの?!」

「いや、うーん…。」

勢いに押されてタイミングを失ってしまっていたけど、なんとか成宮くんを静めて、訳を話すことができた。
prev next

back