あの後は何もかもをはぐらかして帰宅した。
次の日の登校は気が重かったけど、私の素性がバレた所で白河くんと話すことは特にないのだ。
何事もなく午前中を終えたのでかなり気が抜けていたのだけど、いつも通り友達とお昼ごはんを食べるべく机をくっつけて集まっていた所で、ちょん、と肩をつつかれた。
驚きならが後ろを振り向くと面倒くさそうな顔をした白河くんがいた。

「成宮が昼休みに探すって言ってたから教室にいない方がいいかもよ。」

私が困惑の声を出すより先に、ボソッと早口で言い切り、私が応答する前に去っていった。

(そ、それは考えてなかった…!ていうかやっぱり普通にバレてる!)

私がとりあえず今日は他のところで食べる断りを入れようかと、友達の方を向いたところ、
すぐそばで座ってすでにお弁当を広げていた友達の一人が怯えたような声で「何かあった?」と言った。
私はクラスでは(元々派手でも華やかでもないけど)地味でおとなしい子で通しているので友達もおとなしい子が多い。
積極的に学校のアイドル野球部に関わることはないし、野球部である上にすこしキツい性格をしている白河くんなんかは特に怖い印象があるのだった。

「ちょっと私、成宮くんに探されてるみたいで…。しばらく学食とかで食べるかも。」

「成宮くんに?」

「色々あって…。もし成宮くん来ても内緒でお願い!」

私が手を合わせてお願いすると、いいよーと軽い感じの返事が返ってきた。
勉強をしに来ている子たちだから、流石に成宮くんは知っていてもそんなに興味はないらしい。
私もよく勉強を教えてもらっているし助かっている。
恵まれてるなぁと思いながら、作ってきたおにぎりを持って食堂へ向かった。


稲実の食堂は広いし、成宮くんがいると聞こえる女の子たちの声が聞こえない。
午後の授業が始まる10分前くらい、もういいだろうと席を立ってまだ混雑している慣れない食堂内を人をよけながら歩いていたら、誰かにぶつかった。

「あ、わり。」

ぶつかった瞬間の感触があまりに硬かったのと、その声で冷や汗がぶわっと出た。
よろけた表紙で前髪が寄って目がよく見えてしまったのだろう。
ぶつかった当人、神谷くんは気がついたみたいで指をさしながらがら大きな声を出した。

「あ!昨日の!」

やっちゃった、という顔をして横にいた白河くんを見ると、ため息をついていた。

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