あっという間に2年生になった。
新しい友達も少しできた。
白河くんとまた同じクラスだなと思った。

今までぎこちなくも回っていた高校生活の歯車だったけど、
1つ狂えば、他もたやすく崩れていくのだった。


私は1年間、基本的に新体操の教室が遠い演習場を選んだ時以外の日に旧体育館で練習をし、大体野球部が練習を終える少し前に終えてナイターが点いている明るい道を帰らせてもらっていた。
最後に鍵を返さなければいけないのに体育教官室に人がいないことがあり、周りをウロチョロしていたところを国友監督に見つかった時はかなり怖かったけれど、訳を話したら国友監督が返却を申し出てくれた。
それからはこういう時は、野球部のプレハブに届ければよいことになった。
ここまでは良いことだった。
だけどこうして私の個人練習が把握されたことがはじまりの歯車を狂わせた。

大会が近かった。
1年生の時に数回出た大会では1度もグランプリを取ることができなかった。
そりゃそうだ、本気でやるなら通信制の高校に入って、毎日10時間は練習するものなのだ。
それでも言うほど悪くない結果が、私を諦めさせることはなかった。
幸か不幸か、21時に差し掛かるころ、本日最後の通し演技がかなりよく決まって一息ついた所だった。
演技中は全く気が付かなかった。
扉が少し開かれていて、見知った顔が2人に拍手を送られていた。

「えっ…えぇ?!」

「すげぇ!すげぇ体柔らかいのね!」

「おー、新体操なんて間近でみたの初めてだぜ。すげぇな。」

「い、いつから…?」

「来てみたらちょうど曲が始まった所だったから終わるまで見てようってなってさ!いやぁ〜目の保養だね!俺たち同級生がいるからって監督に言われて来たんだけど、何組?名前は??すっげぇかわいいじゃん!スタイル抜群だし!あっ目の色おそろいじゃない?!見て見て!」

「わわっ。」

「おい鳴、困ってるって。」

「えぇ〜いいじゃん!ねぇねぇ、何組?オイラかわいいこ大体覚えてるけど、君のこと見たことないよ?」

「確かに見たことないな。何組なの?」

去年の夏に見た稲実のアイドルのような存在代表、成宮くんだ。
ぐいぐいこられて狼狽していたら神谷くんが間に入ってくれたけど、結局会話に乗っかってしまっている。
2人がしつこくクラスを聞いてくるけど、たまに雑誌やテレビに出ることで素性がバレるのを防ぐため、普段は長い前髪を下ろして髪が目に入らないように眼鏡をかけている。
ようするに、かなり地味な見た目をして過ごしている。
自意識過剰かもしれないけど、バレて変な期待をかけられたくなかった。
なるべくなら、特に野球部にバレたくない。
そもそも2人はきっと監督に私の帰宅を促すように指示されたはずだ。
片付けがあるので、とかで切り抜けようとしたところだった。

「何やってんの?監督に早く体育館閉めるように言われたじゃん。」

「うわっ!白河来たの?」

「なぁ白河はこの子、見たことあるか?」

「いいから、早く閉めるよ。…あんたも。」

そう言って白河くんは冷や汗をかいている私を見た。

バレてるなぁ、これは。


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普通よこすなら1軍じゃない選手よこすと思うけど、
ここは夢小説なので多少都合よくですみません。
白河がついてきたのは、知ってたから。
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