昨日の今日で昼食のことなんか考えてなかったから、それで言ってくれたのかなぁとか思ってたけど、こういうことだったんだ。

「いやー、誰が座ってんのかと思った!ねぇねぇ、元気だった?」

「おー、廊下ですれ違ってもえらい辛気臭い顔してたから俺も心配してたんだわ。」

成宮くんが頬に米粒をつけながら身を乗り出して聞いてくる。
神谷くんは対照的に頬杖をついてゆっくりと話した。
2人とも食べながらなのに器用に話す。
これも野球部で身に着けた技なのだろうか。

「げ、元気でした!おかげさまで…。」

前と変わらず接してくれる2人に感動しつつ言葉通り元気に返事ができたものの、後半は目の前に出されたものに圧倒されて声が小さくなってしまった。

「…何これ。」

「どうみてもオムライスでしょ。」


お昼に誘われたはいいけど、4限目が終わると白河くんは1人で席を立って出て行ったので、これはとりあえず私もちょっと置いて1人でいけばいいやつだなと察して友達に一言いれて食堂へ向かった。

食堂に着くと、入口で白河くんが待っていて、特に言葉を交わすでもなくそのまま合流して食券を買うと、ヒョイと手からオムライスの食券が奪われた。
私が反応する前に白河くんが「持ってくから座ってて」といって、不自然に空席になっている一角を指さした。
定位置なんだろうなぁと察した。
稲実野球部のスタメンがこれだけ揃うなら食堂の席くらい皆譲るだろう。

そこで気が付いたのだった。
成宮くんと神谷くんと合わせるために誘ってくれたのだと分かった。
私が1人で座っていると2人が自分のご飯をもってやってきて、少し話をしている内に白河くんが私のご飯を持ってきてくれて、今に至る。
ただ目の前に置かれたオムライスは問題だ。

「大きいよ!」

「ん?普通じゃん。」

「普通だろ。」

「普通じゃない!」

成宮くんも神谷くんも特に変わりはないみたいな反応だけど、野球部の皆にとって普通ってことは確実に普通の女子が食べる量じゃないってことじゃないか。

「白河くんが行ったからこんな大盛にしてくれたんじゃないの?!」

「…まぁ、多いなら俺が食べる。」

「え……ふふっ。」

白河くんがオムライスを食べる姿を想像して笑うと、考えていることはまたバレているようで、こめかみをつつかれた。
どうせ白河くんのことだから私が食べ終わるの待ってるんだろうな。
せめて温かいうちに一口、そう思って私はスプーンにオムライスのはしっこを取って、白河くんの口元に持って行った。

「じゃあ、はい。」


**********************************
すぐに別目線が書きたくなるから三人称にすればよかったんだよなぁ。
自分の高校では全国行くレベルの部はお昼は学校がお弁当用意してたけど、流石に昼くらい好きなもの食べれるよね野球部。

prev next

back