――「とにかく安静にしてすぐに寝ること。」
結局アパートのドアの目の前まで送ってもらった私は、白河くんに言われた通り体を拭いてすぐに寝て、今朝方全快した。
朝風呂に入ってストレッチ。
ご飯を食べて制服に着替える。
化粧はしない。
日焼け止め(スポンサーからの支給なので高級なやつだ)を塗って、
最後に全身鏡の前に立ち、前髪をおろして眼鏡をかける。
深呼吸をして、ひとつ考えた。
(今日いちばん初めに白河くんに「おはよう」って言おう。
それではっきり切り替えられそう。)
昨日の嵐の後で外は快晴で、良く前を向けた朝だった。
―――――――――――――
既に多くの生徒が登校しているようで、いつも通り教室へ向かう廊下はそこそこ賑やかだった。
白河くんはだいたい1人で席にいて、予習や課題ぽいことをしていたり、よく分からない沢山並んだ四角に記号が書いてある資料を見ていたりする。
そんなイメージをしながら教室のドアからチラリと覗いたが、想像した通りの光景はそこにはなかった。
「いない…?」
「またのぞきしてる。」
「ぅわっ!」
急に耳元で言われて驚き振り返ると、イタズラが成功して笑みを浮かべる席にいるはずだった当人がいた。
足音も気配もまったくしなかった。
…この人、つけてきたな?!
ストーカー!って言い返してやりたかったけど、今日はいちばん始めに言うって決めてたんだ。
「おはよう。」
「…………。」
「おはよう!」
「…おはよう?」
「よし!!」
きっとイタズラの反撃がなかったことと、なんで「よし」とか言われなきゃならないんだって不満な顔をしているだろうなと思いつつも、私が白河くんのそんな顔を見ずに自分の席へ向かおうとすると、鞄を引っ張られた。
ただでさえ、さっきからクラスメイトに注目されているのは白河くんだって分かっているはずなのになんだろう。
少し身構えながら振り返ると
「昼は学食に来い。」
それだけ言って白河君は自分の席に着いた。
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