今日は大嵐の予報で、実際ひどい雨風だったから、屋内で筋トレメインのメニューとなった。
筋トレなら、フォームを崩さないよう注意さえしていれば多少考え事ができる。

いつも筋トレの最中に考えることと言えば、まず野球のこと、テストが近ければ勉強のこと、楽しみにしている深夜ラジオの日であればその番組のことだ。
今日だって本当なら秋大に向けた新チームのことを考えるべきだったのに、いつの間にか違うことを考えてしまっている。
あれから青葉と話をしていない。


「なぁ、青葉ってなんかあったの?」

そう聞いてきたのは隣で俺と同様にウエイトトレーニングをしていたカルロスだった。
甲子園という名の夏が終わって、青葉があの場所に来なくなってからひと月ほど経とうとしている。
不思議に思ってもおかしくないころ合いだ。

「…知らない。学校で普通に聞いてみれば。」

「なんとなく話かけづらくてタイミング逃しちまった。白河は同じクラスじゃん。」

同じクラスだからなんだ。
まぁ、あれから青葉が話しかけづらいのは事実だ。
特に俺は、曖昧だけど理由を知っているわけだし。

青葉はもう一度新体操を選んだ。
だからって、話かけたらいけないわけじゃないだろうけど、本人がそういう雰囲気を出しているからそれに従っているだけ。
何か変なことをした覚えはない。
あの時は自分至上最高に女子に的確な対応ができたと思っている。
何か話の種とかあれば。
新チームの話とか興味あるだろうか。
って、いつの間にか考えてしまう日々をひと月ほど過ごしているわけだ。
そんなこんなで同じクラスだからこそ、より絡みづらい距離になってしまっている。

…別に絡みたいわけじゃないけど。

「前からそんなに話とかしないし、戻っただけ。」

「へぇ。」

カルロスは挑発とも納得ともとれるような曖昧な返事をした。
雨風が壁をうつ音がうるさいしこれ以上話は続かなかった。
成宮が遠くで文句を垂れる声はよく聞こえてきたけど。


いつもより少し早く部活が終わった。
こんな日でも青葉は遠くの教室に行くのだろうか。
……って、くそ、また考えてる。


みんな部屋に戻ってる。
当たり前だ、こんな天気なのだから。

「……………。」

少しだけ、一人になろう。
そう思って向かったのは、いつもあいつがいたあの場所だった。



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