「決勝、見に来るんだって?」
昼休み残り数分。
着席して教科書を準備していた所に上から声が降ってきた。
白河くんが教室で話しかけてくるなんて珍しい。
多分かなりタイミングを見計らってきたんだと思う。
私も驚きたかったのを抑えて自然に返事をした。
「成宮くんに聞いたの?」
「言いふらしてた。」
「えぇ…なにそれ。」
「………。」
「…………どうかした?」
「何を見ることになるかわかってる?……中途半端の青葉。」
びっくりして肩がはねた。
なんで。どうして。
「どうして、そこまで気がつくの……?」
「…………。」
白河くんは答えなかった。
これ以上言わないでいてくれたのか、それとも白河くんにも何か言えない事情があるのか…。
しばらく黙ったまま机の横にいて不自然だったけど、授業開始のチャイムがこの沈黙を遮った。
白河くんは自分の席の方を向いて、このままそちらに向かうのかと思いきや、私の方へ振り返ったのでまた驚いてしまった。
「来なよ。甲子園に行くのは俺たちだから。」
いつものボソボソ声より少しだけ力を入れてそう言った後、私が何も言わないことを確認して目を細め、今度は本当に席へ帰っていった。
あぁ、それで気が付いたんだ。
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