「ねぇ!今度の試合は今週の土曜なんだけど!見に来ない?!」

もう今日は練習を終え、旧体育館を出てグラウンド脇を歩いていたところ、遠くから成宮くんの声がした。
私に言っているのかわからなかったけど、一応周りを見渡して確認すると、こちらに向かって手を振る成宮くんが見えた。
周りの人たちが何だ何だみたいになって気まずい。

私が黙って立ち止まっていると、成宮くんが走ってこちらにやってきた。
早い!

「土曜!3日後!」

「土日は教室があるから…。」

「決勝だよ?!俺たちが甲子園行くとこ見たくない?!」

「………!」

いつもの成宮くんと違うなって思った。
なんだろう、焦っているような、怒っているような、楽しんでいるような、そんな顔。
でも一番感じたのは、負ける気がしない、そんな闘志だった。

ただでさえ普通に高校に通って、大会でグランプリをとっていく選手の倍以上練習量が少ないのだ。
土日の教室は欠かしたくなかった。
だけど、1年以上見てきた、野球にすべてを捧げた人たちの甲子園をかけた決勝戦。
もう悩むこともないはずなのに、



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