「で、ずっと俺が防いできたんだけど!4回表で雅さんがホームラン!」

「流石女房役ってやつ?」

「それね!」

「青葉はよく鳴の話聞いてられるよな。坊やの面倒見てくれて助かるわ。今頃ミーティングルームにいる先輩達も感謝してるぜ。」

神谷くんに抗議を始めた成宮くんを横目に考える。
野球の知識はほとんど無かったけど、成宮くんの話が聞いていて本当に楽しいし、成宮くんの感情がよくわかるから場面がイメージしやすくてルールとか用語も段々覚えてきた。
週に2,3回、たった10分くらいだけど皆といるこの時間が大好きだ。
心の支えにすらなっていると思う。

そういえば、疑問に思っていたことがあったんだった。

「先輩達とか、監督とか?は知ってるの?ここに来てること。」

始めの方は成宮くんと神谷くんだけのこともあったけど、最近はもっぱら3人揃って来る。
3人揃って抜け出すのは流石におかしいと思われてるんじゃないかな?

「あーそれな。」

神谷くんが成宮くんを振り払いながら扉の方に視線を向けた。
そっちの方にいる人と言えば白河くんだ。
今は素振りをしてる。
神谷くんは、白河くんがこちらのことを把握していないことを確認して、小声で言った。

「白河が監督に体育館閉めるように言いにいくっつって許しをもらってんだよ。先輩達は鳴がここにくると機嫌よくなるから黙認してる、みたいな感じ。俺は面白そうだから来てる。オリンピック選手と知り合いなんて自慢できるしな。」

「カルロ何それ初耳なんだけど?!誰が言ったの?!雅さん?!」

「うるさいうるさい。2人とも俺が言ったって先輩達と白河に言うなよ。」

私が嬉しさと申し訳なさで何も言えずにいると、騒がしい声を聞きつけたのか、白河くんがやってきて「何やってんの。」と言った。
神谷くんが答えられる状況じゃなかったので、私が白河くんを直視できないまま「別に…。」と答えると、怪しい、といったように白河くんは顔をしかめた。

「…なにか欲しいものある?」

「は?打率。」

真剣に聞いたのに!
不満声を発しながら背中をバンバン軽く叩くと、少し笑っている口元が見えた。
はぐらすことができたなら結果オーライかな?
こうしてる時間がとても尊い。
いつか本当に、なにか力になりたい。

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桜沢戦、地味に流れ変えるきっかけを作ったの白河ですよね。

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