「ちょっと聞いてよ〜俺今日告白されちゃった!」
旧体育館に乗り込んでくるなり寝そべった成宮くんはそう言ってピースをした。
告白!
そういう話ってクラスの友達ともしないかも。
クラブを振り回していた私は手をとめて話に食いついた。
「えっ、聞きたい!」
私が詰めよると成宮くんはにんまりした。
「ふふん、別にオイラこれ何度目かわからないけどね〜!」と成宮くんがいらない焦らしをする間に後の二人、神谷くんと白河くんがやってきた。
「青葉、こういう話に食いつくほうだったたの?意外だわ。」
蝉が泣き始めるくらいに暑くなってからというもの、神谷くんは基本的に上になにも着ていない。
もう慣れてしまって、今となっては逆に見てると褐色の腹筋に触りたくなるので一応許可をとって触ったりするけど、そのたびに調子にのるからやめろと白河くんに制される。
「あんまり友達とこういう話もしないし、普通に野球部の女事情に興味ある!」
「女事情ってなんだよ。」
「まぁまぁ俺の話聞きなって!知ってる?3年の美術部の美人の先輩!」
「おー、美術部かどうか知らねえけど、あの人かなってのはあるな。」
「「知らない。」」
白河くんとハモってしまって顔を見合わせた。
だよね?という意味で首を少しかしげてみると、白河くんは頷いて、それからこう続けた。
「でも断ったんだろ。」
「まぁねー。」
「えっ、なんで?」
「えー?だって、そりゃあ、甲子園をテレビで見てさー、俺のことかっこいいと思ってくれるのは嬉しいけど、そこだけ見られてもと思うし。それと、俺と付き合うってことどういうことか青葉ちゃんなら分かるでしょ?」
「自分勝手と我儘につき合うことになる。」
「坊やだしな。」
「カルロと白河は黙ってて!」
なるほどなーと思った。
テレビのドキュメンタリーとかでもよくやってるじゃないか。
野球選手を支えるということがどんなに大変なことか。
たとえ高校生でも変わらない。
ましてや関東一と言われるエース様だ。
成宮くんは、”そこ”に至るまでの泥臭い自分も知ってくれてる人がいいと思っているのだろう。
「そっかー。成宮くんに今すごい好感持っちゃった。」
「それって今までは好感じゃなかったってこと?!」
そうじゃないけど、好感、というよりは尊敬だったので言うのが恥ずかしくて笑ってごまかすと成宮くんはふくれっ面になった。
「神谷くんと白河くんの女事情は?」
「女事情っていうな。」
「女の子事情。」
ふざけて言い直すと軽く小突かれた。
そんな私たちを見て、「仲いいな」と神谷くんが言う。
神谷くんは流石に何かあるでしょうと思って待っていると、
予想していなかった話を成宮くんが出してきた。
「そういえば、白河はちょい前に呼び出しされてたやつ、どうしたの?」
「断った。」
「え??!?!?!!!?」
「………何。」
「白河くん告白されたの?!」
「だから何。」
いやほんとに、白河くんにとってはだから何、なんだけど。
私が驚いた理由の半分はこんな(初見で)不愛想な人を好きになる子がいるんだってことと、
もう半分は、なんだろう、ちょっと焦り。
私以外にもこの人の良い所に気づいた女の子がいるのかなっていう焦り。
で、出た言葉がこれ。
「私とどっちが可愛いかった?」
「………は?」
3人が何言ってんだこいつみたいな顔になってるのを見て、
自分が何を口走ってしまったのかを認識して恥ずかしくなった。
多分、今顔まっかだと思う。
「ごめん!ごめん忘れてごめん!今日はもう帰る!ここまで!」
私は3人を旧体育館から押し出した。
はぁー、明日普通に過ごすの大変そう。
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「いやー、驚いた。驚いてからかうのも忘れた。」
「白河顔赤いよ〜?」
「うるさい。」
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無駄に妙な設定をつけたくなかったのでカルロスの女事情は流してしまいました。
原作の様子だと、成宮は彼女を作らないんじゃなくて、本当にできないんだと思うけど、
成宮は普通にかっこいいので告白とかも普通にされてるんじゃないかと思いたい。
ほんとは白河に嫉妬させたかったけど、絶対言わないので…せめて2人きりじゃないと…。
いつかそういう話を書きたい。
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