「やっほー!青葉ちゃん!」

「いやー、暑いね。」

「うわっ!」

最近は野球部の皆もあまり顔も出さなくなり、これは夏に向けて集中してるのかなと思っていたのだけど、6月の中旬、だいぶ暑さを感じるようになってきたころ彼らはまた顔を出した。
久しぶりに見たカルロスくんの上半身のインパクトが強くて、手に持っていたクラブを落としかけた。

「成宮くん、声は明るいけど顔が笑ってないよ。」

「聞いてよ!こないだ練習試合でちょーーーっとチェンジアップ投げたら、監督と雅さんまーーーだ怒ってんの!」

「チェンジアップ?」

雅さんは正捕手の変わった眉毛で濃い顔をした3年生の捕手で、キャプテンの人だ。
直接聞いたわけじゃないけど、全校で行われる歓送迎会で代表を務めていたし、今までの成宮くんの個人的な話にも何度か出てきた人だ。
チェンジアップはちょっと聞いたことあるかも?というくらいで分らなかったので聞いてみた。
分らないまま適当に聞くのは好きじゃない。

「球種な。」

「そう!ストレートと同じ振りなんだけど球速が遅いのがチェンジアップね!」

そういって成宮君は投球の仕草をした。
関東一投手のフォームをまじかで見れるなんて役得だ。

「あ!さては見惚れてるなぁ〜君。」

「えっ違うよ!役得だなぁって思ってただけ。」

「違くないじゃん!」

「ちょっと違うってば。」

そう言って顔の前で手を振って否定すると、「えー。」とか言いながら成宮くんはTシャツの裾で顔の汗を拭いた。
裾がめくられたときに見えた腹筋がすごい。

「みんな腹筋すごいね?私最近下腹がでてるって怒られちゃった。そんなに出てる?」

言っても私だって少しは腹筋は割れているのだ。
成宮くんが監督と雅さんに怒られたように、私も前の土日でコーチにさんざんなことを言われたので、ちょっと持て囃してもらおうかなぁなんてやましい気持ちでトップスの裾をめくって見せた。

「……………。」

「…………………あー。」

「えっ…私のお腹どうかした?」

「……いや。状況が意味わかんねぇけど、俺らも今役得だって思ってる。」

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