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「うお〜キタ〜!仙台市体育館再びっ。」

今日と明日、数試合するだけで宮城代表が決定する。
これまでの集大成。
その重圧と緊張からか皆何を喋るわけでもなく、各々神妙な面持ちをしている。
今日くらいはやっぱり静かだなと思ったのもつかの間、走り出した日向君、それを追いかける影山君。
日向君は初めての練習試合のときバスで吐いたって聞いたけど、本当なのだろうか。

「日向と影山は脊椎反射で生きてる感じだね。」

「虫みたい。」

なるほど。
私が納得した瞬間に田中さんと西谷さんが吹き出した。

「メガネちゃーん!今日こそ番号教えてねーっ!っていうか烏野って女子マネ他にもいんの?!スゲー!」

照れる清水先輩、飛びかかる田中さん&西谷さん。
月島と山口君の後ろにいて何が起こっているかよく見えなかった私が覗き込もうとすると、「君はいいから。」といって月島に静止された。
月島が空中でなんちゃらとか言うから気になったというのに、そう思って軽く小突くと仕返しに上から頭をぐっと押された。

中に入るとよく知った空気だった。
菅原先輩がCコートに”女王”というので気になって見てみると、新山女子の選手が入場していた。
そうか、新山女子って宮城だった。
多少選手の名前が分かるのであの人があの人でーと心の中で勝手にやっていると、田中さんが話しかけたので驚いた。
幼馴染がいるっぽい・・・?
今度ちょっと話聞いてみよう。


烏野は3試合目なので、それまで観戦組みに混じって噂の伊達工や青葉城西の試合を見ていた。
どちらも面白いチームだったけど、セッターの身としては及川さんてかっこいいなーなんて思ってしまっている自分がいてちょっと恥ずかしい。
青葉城西の方は京谷さんを探したけど見つからなかった。
まぁでも普通に考えてこのチームに京谷さん、よほど特異なチーム用の秘密兵器とかかなーと思うし、それって烏野では?と思気が付いて冷や汗をかいた。

「ぅあ?!」

「なに神妙な面持ちで汗とかかいてんの?」

私がうーんと考えていると、急に首筋をツーっと触られてブワッとなった。
こ、こいつこんなことするような人だったけ?!と思いながら触られた首筋を抑えて月島をにらみつけると、案の定ニヤついてこちらを見ている顔があった。
人の気も知らないで!
でも京谷さんのことは言うわけにいかない。
なので青葉城西つながりでこう言い返してやった。

「別に、ちょっと青葉城西セッターの及川さん、かっこいいなーなんて思ってただけだけど?」

「ハァ?!」

「?」

「朝日奈、あぁいうのが好きだったの?」

「ああいうのって・・・。まぁ同じセッターとしてね。」

「・・・ふーん。」

あっ、まずい。スネた?
合宿を経て月島にこういう所があるのとか、だいぶ分かってきた。
それでもついついやり返してしまうので毎回反省しながらご機嫌をとるのだった。
お兄さんがいるのは聞いていたけど、こういうところ、弟っぽい。

「何があったって烏野が勝つし、ちゃんと約束守るよ。」

「・・・。」

「あ、みんな帰ってきた。ほら行った行った、スタンディングメンバーでしょ!」

私が背中を推しつつ拳を突き出すと、表情は変わらないままだけど月島は軽く挙を合わせてくれた。
まぁまぁ機嫌なおったかな。
良かった。

<あとがき>
青葉城西戦までは原作の内容を書いてるだけになってしまいそうなので、飛ばそうと思ってます。
最高に熱い部分に突入しますが、キャラとの絡みがなくなってしまうのでなんとか上手くやりたいです。
管理人がバレーに詳しくないくせにヒロインの上から目線描写が増えることが予想されますが、ついてきていただけたら幸いです。


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