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結論から言うと開会式は大成功だった。
普通の高校生のレベルを圧倒的に超えたクオリティに拍手喝采で、そのあとも興奮の冷めない生徒たちの様子に心の中でガッツポーズをした。

少し困ったのはそのあとのこと。

”開会式の歌の女の子は何組の誰なのか”

そんな話題が校内を包んだ。
学園祭中、隣をゆく人たちが開会式について口にしているとビクビクしながら通り過ぎたものだった。
面白がってか私を想ってか、文化委員のメンバーが隠し通したので、この話題は学園祭が終わったあともしばらく続いた。

「結局開会式の歌の人、誰か分かってないんスよね!」

部活中、そんな日向くんの声が聞こえて耳を澄ます。

「あーその話な!1年生ってのは分かってるんだよな。」

「そうなんですけど、何組の誰か分かってないらしいです!」

「すっげー声綺麗だったよなぁ。」

「それな。見た目はアレだったから分からないけど、声聞けば分かると思うんだよな。」

めちゃめちゃ言われている・・・!
仕事が終わってあとは挨拶をして帰るだけなのだが、こんな話をされては挨拶をしに行きづらい。
尻込みしていたけど、仁花ちゃんが駆け足でこちらに向かっているのが見えてほっとする。

「憂ちゃん!さっき日向から聞いたんだけど、みんなで坂ノ下商店行くことになってるんだって!よければ一緒に行かない?」

「本当?行く!」

とりあえず一難のがれてその場で着替え組みを待ち、皆で坂ノ下商店へ向かった。
大地さんが仁花ちゃんと私で1つ肉まんを奢ってくれたのでありがたくいただく。
部活帰りの空腹と寒い季節の肉まんの最高の感じを噛みしめて例の話題のことはすっかり頭から抜けていた。

本戦をまであと2日となった今、仁花ちゃんが日向くんと、清水先輩が3年生の先輩と話をし出すと同時に、私の所に来るのは1人しかいなかった。

「随分話題になってるよねぇ、歌の女の子。」

私はおもいっきりむせた。
かろうじで顔を上げると、すごくニヤニヤしている月島の顔があった。
バレバレだ。

「ねぇ、誰だろうねぇ。文化委員なら知ってるんデショ?」

「・・・・・・なんでわかったの。」

「そりゃ見た目は着飾ってたし遠目だし、声も普段とは違う感じだったけど、あの感じの声、聞いたことあったし。」

「?」

「君が泣いたときの声にそっくりだったからね。」

顔が赤くになるのが分かる。
一呼吸おいて、ごまかすように「はぁ?!」と言ってから恥ずかしいのを隠すために月島をポカポカ叩いた。

「ちょ、痛い痛い。」

「リハビリの成果だコラ!!」

「お、なんだ喧嘩か?朝日奈ちゃんやっちまえ!」

「憂ちゃん?!」

「朝日奈ちゃんどうした?!」

「ツッキー?!」


本戦まで、あと2日。


<あとがき>
本編かなり関係ないんですが、きっとあっただろう文化祭、折角だからおいしく使わせてもらいたかったので
ヒロインをちょっとした人気ものにするために、月島に見合うだけの子に近づけるために書かせてもらいました。
こんなのに3話も使って申し訳ないです。
次からは本編の続きです。予定です。


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