「はぁ・・・・・・。」
「何、昨日の委員会で何かあったの?」
「わっ、ちょ、ちょっと、今年の開会式の出し物を頑張ろうって話になってて、それでね。内容は内緒だから言えないんだけど。」
「ふーん。」
朝練の後、ため息をついた私の後ろに急に立った月島に話かけられ、一緒に教室へと向かうことになった。
ちょっと制服の着方が雑だ。
急いで着替えたらしい。
「お兄さんの方はどう?」
「めんどくさい社会人の人がいる。煽るのが好きな人。」
「うわぁ、月島苦手そう。」
「朝日奈は自分より圧倒的に上の相手と対峙したことある?」
「まぁあるよね。」
「・・・やっぱいいや、コーチに聞く。」
「それがいいよ。コーチの驚いた顔、目に浮かぶな〜。」
話しかけられたときとは逆で、教室に入るときには月島は顔を歪ませ、私は多少のエミを浮かべていた。
月島も頑張ってる、私も頑張らないと。
かなり別の方向だけど。
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それからは学園祭の準備、病院、部活、準備準備病院、ただでさえ一人暮らしでやることが多いので、てんてこまいの日々だった。
あっというまに学園祭当日となり、かなり早く集まった文化委員で舞台を整え、最後のリハを行った。
これまで何度も練習をしたし、衣装を着てウィッグをかぶってメイクを施した自分はすっかり別人だったのでクラスメイトや部活メンバーにバレる心配もなく、緊張どころかわくわくしていた。
「ここまでこれたのはみんなのおかげ!完成度はかなり高いと思う!最高の学園祭にしよう!!」
委員長が高らかに言うと、大きな拍手が起こった。
あとは本番を迎えるのみ。
文化委員は特別に朝は教室に集まらなくていいことになっていたので、私は衣装のまま待機していた。
すぐに生徒たちが体育館に集まってきて、人数分頑張って並べたパイプ椅子が埋まりつつあった。
先輩達が幕の端をめくってその様子を見て興奮している。
前の高校ではなんともなしに過ぎてしまった学園祭だったから、私も、いよいよ始まったという雰囲気につられて座っていた椅子から立ち上がる。
ポケットにしまえないので遠くに置いていたスマホでも確認すると、仁花ちゃんからLINEが来ていた。
”開会式すごいって聞いてるよ!楽しみ!”
委員会のみんながかなりの守秘を貫いたので、なにをやるかすらバレていないようだった。
”うん!すごいよ!楽しみにしてて!!”
そう返した瞬間、また通知が入る。
今度は仁花ちゃんからではなく、月島からだった。
”元気?”
らしすぎるLINEに笑ってしまった。
思えば1次予選が終わってからと言うもの、同じクラスの月島に会わない日はなかった。
それが昨日は授業がなく、1日丸々準備の時間だったので私は朝から文化委員の仕事に行きっぱなしで月島に会っていなかった。
かといって前日に連絡をよこすでもなく、このタイミング。
”元気だよ”
そう返してから既読がつくのを待っていると、隣にきた委員長が親指を立てて言った。
「彼氏ぃ?」
「ち、違います!友達です。」
「え〜なんか笑ってる顔の感じがいつもと違かったからそうかと思ったのに。」
「最近忙しかったので、一番気にかけてくれる友達からだったんです。」
「ふーんそっか!朝日奈さん転校生って言ってたもんね、そーゆー友達がいるのはいいことだね!本番頑張ろうね!!」
「はいっ!」
しばらくして開会式が始まるアナウンスが入る。
どうやら委員長は全員のところに回っていた委員長が舞台の真ん中に全員を集め、円陣を組むよう言った。
ここ1ヶ月、作業をともにした仲間たちはなんのためらいもなく肩を組む。
「絶対、最高の、学園祭にするぞー!!!」
「「「おーーー!!!」」」
私も柄にもなく叫んでしまった。
いまの声は幕の向こうの人たちにも聞こえたと思う。
掛け声を合図に照明が落ちる。
さぁ始まるんだ。