「待って、君一人暮らしなの。」
「そうだけど、ここ親戚のアパートだから格安で借りてるし親戚の家すぐそこだし、そんな大げさなことじゃないよ。」
適当に座ってと月島を促してから冷蔵庫に入れてあるお茶を出した。
「それで、昔なにかあったの?私がいないころ。」
「もっとずっと昔の話だよ、山口しか知らないくらいのね。」
そんな話を私に・・・?と思ったけど、
きっと私が過去を教えてるが月島だけだと、月島が知っていることと、
私が何も意見する立場じゃないからだろう。
野暮なことは聞かずに黙って聞くことにした。
月島が話てくれたのはお兄さんの話。
私も挫折していく人をたくさん見てきたけど、そんな風に挫折を経験してしまった月島が
それでもバレーを始めて、今でも続けているんだから・・・・
「だから、部活なんて本気でやるもんじゃないんだよ。」
「頭いいんだから、分かってるくせに。」
私がそう言うと、部屋の隅を見つめている月島はちょっとだけ目を細めた。
「次の合宿で見つかるといいね。」
「・・・ん。」
「こないだの合宿、私楽しかったから次も楽しみ。」
「音駒のセッターとか?」
「なんか研磨にやけにつっかかるけど、前に試合した時に研磨となにかあった?」
「はぁ〜〜、ないこともなかったけど。」
「何?」
「友達がいないって言ってた君とどういう関係なの。」
「ああ、研磨は中学の時、学校同士の練習試合でちょっと会っただけ。
同じポジションだったから、仲間内でも、バレーでも。気が合ったから話したの。
それから2回目に会ったのがこないだの合宿。」
「へぇ。」
へぇって自分から聞いといて・・・という感じだったけど、
まぁなんともない経緯だし、それくらいの感想で妥当かと思ったのと、
何より月島がいつもの馬鹿にしたような顔ではなくてどことなく、嬉しそうな顔だったので私も少し笑って話を終わらせた。
「じゃあ僕帰るよ。」
「ああ、うん。今日はありがとう。」
「うん、僕も。」
「ん?」
「僕も、ありがと。」