「送ってくよ。」
「え?!いいよ、まだ全然明るいし!奢ってもらってそんなことまで・・・。」
本当にまだ全然明るいので折角の休みだし少しでもはやく帰ったら?と遠慮すると
眼を細めて呆れなのか照れなのかなんとも言えないような顔をされた。
「あのねぇ、さっきも同じこと言ったけど、僕このまま帰ったらすごいカッコ悪いでしょ。一応君は怪我人だし。」
「あっはい。お、お願いします。」
そうか秦から見るとそういうことになるのか。
さっきも支払いの時に同じようなこと言われたのを思い出してあっさり了承してしまった。
「じゃあ行くよ、どっち?」
「あ、そっちです。学校の近く。」
「なんで敬語。」
「あはは、今日ほんと楽しかったよ。
最初誘われた時なんなんだと思ったけど、誘ってくれてありがとう。」
「まぁ喜んでもらえてよかったよ。一言余計だけど。」
「いやでもあの誘い方ないでしょ〜。」
「君だから別に平気でしょ。」
月島が一人でスイーツ食べに行ってたことも含めて思い出してニヤニヤしながら言うと
逆に嘲笑で返された。
この後も家に着くまでどこの店がおいしいとか、何のケーキが好きかとか、バレー以外の話で尽きることはなかった。
「学校からすごい近いね、家。」
「まぁね、近いから烏野にしたんだし。」
「ふぅん。」
「送ってくれてありがとう。また明日から部活だけど・・・。」
「・・・何?」
「このままで、いいと思ってる?」
「・・・・・・何が?」
「こないだの合宿で、だいたい月島が何を考えてるかわかったよ。
私に何も言う資格ないけど、今選ばないとけないことは分かってるでしょ。」
「・・・・・・。」
「それだけ、言っておこうと思って。じゃあ、またあし・・・。」
「ちょっと。」
「ん?」
「ちょっと聞いてくれる。」
月島はこれまでで一番真剣な目をして言った。
知ってる。
知ってる。
月島がどっちを選びたいか知ってる。
何人も見てきた。
そうしてバレーをやめてしまう子を。
あの時は私にどうすることもできなかったけど、今この立場からならしてあげられることがある。
「こちらこそ、聞かせて。」
私はそう言って部屋に案内した。