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お昼をたべて、ひと試合した後とうとう帰りの時間になってしまった。

試合中に私と研磨の目が何回か合ってるのをみて梟谷の先輩マネさんたちがニヤニヤしいたのを知ってるのでどうしようかと考えたけど、
また2週間後に合うことになるとしてもなにもあれから何も話さずに帰るのはどうかと思って、帰り際、みんなが帰り仕度をしている時に研磨の元へ向かった。

「研磨、おつかれ。また何回か目合ったね。」

「・・・うん。憂が見てくるから。」

「研磨が普通に女子と話している・・・。」

「研磨さん昨日もその人と話してたっすよね!」

私があんまりタイミング選んでられなかったのが悪いんだけど、
研磨に話かけたらまわりにいた音駒の人たちがわらわら寄ってきた。
来た時に田中先輩と騒いでいた虎の人もいる。

「みんなうるさい。・・・憂、何?」

「えっと、なんかごめん。何も言わないで帰るのもなと思っただけ。」

「・・・うん。・・・あのさ。」

「何?」

「憂、アドレス教えてよ、携帯の。」

「いいよ!でも、携帯向こうに置いてあるから取ってこなきゃ。」

「あ、じゃあ翔陽に聞いて。連絡待ってる。」

「日向くんは知ってるんだ。うん、じゃあまた2週間後。」

「うん、また。」

私が手を手を振ると、研磨はあの時と同じように小さく笑って手を振り返してくれた。
また2週間後に会えるのだし、これからは研磨と連絡も取れる。
大変ではあったものの憧れの女子空間の体験したこと、全国レベルのバレーに触れられたこと。
この合宿に来て良かったとはっきりいえる結果だった。
それは選手の皆も同じだろう。
バスに乗ってそんなことを考えながら一息ついた後、
バスに乗ってすぐ熟睡した選手の皆を見て清水先輩と仁花ちゃんと顔を見合わせて、女子マネメンバーも仙台までの道のりを就寝することにした。




烏野高校に戻ると、武田先生から明日は体育館点検のため休みだということが告げられてそのまま解散となった。
私は研磨のアドレスを聞くべく日向くんに話しかけた。

「日向くん、ちょっといい?」

「朝日奈さん?」

「あのね、研磨が日向くんからアドレス教えて貰ってって言ってたから、研磨のアドレス教えて貰える?」

「いいよ!ついでにおれのも送っとく!」

日向くんは慣れた手つきでアドレスを私が差し出した携帯に送ってくれた。
きっとアドレス交換とか慣れてるんだろうなと思いつつ、同級生のアドレス(研磨はひとつ上だけど同い年みたいなもの)を2つも手に入れたことが嬉しかった私は自然と顔が緩む。

「朝日奈さんなんか嬉しそう?」

「えぇっそ、そう?えっと・・・日向くんはまだ練習して行くの?」

「うん。おれはちょっと・・・。じゃあ朝日奈さんまた明後日!」

「うん、ありがとう!また明後日。」

そのあと午後から一度も会話していなかった影山くんに話しかける日向くんを遠目にみて、上手くいくといいなと願った。
日向くんがいなくなったので、私はアドレス帳をみてにやつきながら上機嫌に後ろへ数歩さがったら誰かにぶつかった。

「あっ、ごめんなさい!」

「・・・なにしてたの。」

「・・・えっと、日向くんに日向くんと研磨のアドレス教えてもらってた。」

ぶつかったのは月島だった。
なにしてたのって聞かれたから正直に答えたのにすごい仏頂面。
この後いったいどういう反応すればいいか分からなくて2人沈黙していたら、遠くから「ごめんツッキー!」と言って山口くんが走ってきた。
山口くんとは面と向かって話したことないけど、いっつも月島と一緒だし、ツッキーとか呼んで親しげだし、いつも不思議だと思っていた。

「あれ?朝日奈さんと一緒だったんだねツッキー。」

「山口うるさい。」

「ごめんツッキー!」

そう、いつもこんな感じだ。
どうして山口くんはそんなに月島が好きなのかとおもって見ている私の視線に気づいたらしく、山口くんが声をかけてきた。

「朝日奈さんは帰らないの?」

「日向にアドレス教えてもらってたんだってさ。」

「なんで月島が答えるの。」

「へー!朝日奈さん良かったら俺ともアドレス交換してくれない?」

「?!こ、こちらこそお願いします・・・!」

なんという日だろう同級生のアドレスがこんなに手にはいるなんて!
自分からは到底アドレス交換してなんて言い出せないだろうからとても嬉しい。
山口くんと交換が完了したのでまたアドレス帳を眺めようとして携帯を操作している途中、急に上から伸びてきた手に携帯を奪われた。

「あっ!ちょっと!」

「ツッキー?」

月島が器用に自分の携帯を右手、私の携帯を左手に持ってなにやら操作していた。
私の携帯にはろくなもの入ってないからいいけど、普通の女子とかにやったらすごい怒られるぞと思いながら睨んでいると、
しばらくしたら無言で私の携帯を返してきた。

「ん?・・・あっ!」

「僕のアドレスいれといたから。」

「う、うん。・・・嬉しい。」

「は?!」

「なんでもない!わ、私帰るね!」

「?またねー朝日奈さん!・・・って行っちゃった。
なんか転校初日でツッキーと喧嘩したりして不思議な子だけど結構かわいいよね。同じクラスのやつらも噂してた。」

「・・・ふーん。」

「ツッキー顔赤いよ?!調子悪い?!」

「うるさい山口。」


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