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日向影山コンビの新しい速攻が成功したりしたけど、最後の梟谷戦は烏野の負けで終わった。
その後の自主練も終え、ついにお待ちかねの・・・

「1週間の合宿お疲れ諸君!空腹にこそウマいものは微笑む。ぞんぶんに筋肉を修復しなさい。」

猫又監督の言葉を合図に選手たちが肉争奪戦を始める。
私も仕事をこなしつつ適当に食べ物を取り終えて女子マネで集まっている場所に向かおうとしたところで声をかけられた。

「こないだのレシーブ、凄かったっす!」

「烏野もマネ多いよね。」

「朝日奈さんだっけ、名前聞いたことあるような気がするんだけど・・・。」

など、これまで接点のなかった人達に話かけられる。
ここでペラペラ過去を喋るわけにもいかないので精一杯取り繕うが限界がある。

「ちょっとすいませんね〜。そこの御嬢さん、ちょぉーっと貰っていきますね〜。」

「あっ黒尾!」

「するいぞー!」

「いやいや、ほら、俺ら第三体育館の自主練組でちょっとあるもんだから。」

突然後ろから来た黒尾さんに肩をガッと掴んで引き寄せられ、黒尾さんの言い分に妙に納得した人たちをよそに私をどんどん引きずって行く。

「ちょ、ちょ、ちょっと黒尾さん。助かりましたけど、どこに行くんですか?」

女マネの所に行きたかったんですけど・・・と言う前に、ちょっとうちの現代っ子の相手してよと言うので、
研磨のことかと気が付いてそのままついて行くことにした。
研磨に食べさせるという肉と野菜を取って、体育館の扉の方に向かう。

「オラー野菜も食えよー。」

「米を食えよ!」

「肉だろ!!肉を食え!!」

「食えよー。」

「なんで憂まで・・・。」

「だってやっぱ研磨細いし小さいし。あと野菜嫌いそう。」

「ヒャヒャヒャ、違いねぇ!」

黒尾さんはそういうと、後ろの方で話している日向くんと木兎さんの所に行くようで、
研磨に食わせといてと言って行ってしまった。
去り際に、隣の眼鏡くんを怒らせないよーに、と言い放って。

「はい研磨。」

「え、ちょっとやめてよ憂。恥ずかしいから。」

「黒尾さんに言われてるから。ほらほら。」

研磨はスマホをいじっていたので気を利かせて適当につまんだ野菜を口の近くに無理やりおしつけると研磨は嫌々食べてくれたけど、同時に罰の悪そうな顔をしながら後ろを指差した。

「ちょっと。」

「えっ、何?月島、顔怖い。」

「そういうことするなって今朝いったばっかデショ!」

「えぇ?!全然当てはまらないでしょ今のは!」

「当てはま・・・っ!あぁ、もう!」

「いや憂が悪いよ。」

「研磨?!」

「ですよね。」

またスマホいじりを始める研磨と頭を抱える月島に混乱する私だったけど、後ろから聞こえた”サクサ”という言葉にビクッとする。
見れば黒尾さんが日向くんとリエーフくんに何やら説明をしている所だった。

「そのうちの1人がよりによって宮城に・・・。」

会話を聞いていたのか、月島が反応して言った言葉に木兎さんが突っ込む。

「まぁ”サクサ”の居る井闥山は優勝候補筆頭だけどな。」

もう一度ビクッとする。
わざわざ強調して言うのとあの黒尾さんの表情、知ってていってるなぁ。
私に確認するにもタイミングがない、気が引けるのでこの方法。黒尾さんらしい。
私はもう正解と言っているようなものだった。


それからは、月島が完全にそっちの話に入って行ったころに私は黒尾さんを一瞥して女子マネグループの方へ入って色々満喫したのだった。


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