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「・・・。」

「・・・・・・。」

「・・・・・・なに。」

早朝いつも通り、勝手にボールに触らせていただいていると、やっぱり月島はやって来た。
数秒睨み合ってから、昨日の怒っている顔をさらに歪ませた感じの表情で月島が口を開いたのを見て、まだ怒っていることを確認する。
私は月島の近くに行き、昨日の赤葦さんのアドバイスを思い出す。

”まぁ月島もくだらないことで怒ってるけど、絶対にどうして怒ってるのか聞かないこと。
あとは、そうだな、ごめんねって言ってから適当にボディータッチとかが無難かな。”

一応、扱いづらい男の扱いには自信があったけど、こういったシチュエーションは無かったなぁ。
なんて思いながらスマホで検索した結果、甘すぎて胸やけしそうになったものだから早急にページを閉じて、結局”あの人”にするならどうするか考えて実行することことにした。
あの面倒くさい男ほど面倒な男もいないだろうからはずすことはないと思うし、
なにより自分が緊張しなくてすむと思ったから。

「は?!えっ、ちょっ・・・朝日奈?!」

「機嫌なおった・・・?ごめん。」
言う順序が逆でしょ、そう言いながら頭をぺらい胸板に押し付けて抱きついていた私をひっぺがした。
思ったより焦ってたなぁと思いながら多分顔がニヤニヤしてしまっていたと思う。
そんな私を見て月島は赤面顔で一つため息をついた後、私の目を隠すように頭に手を置いた。

「そういうの、昨日の含めて、他の人にやらないこと。」

ああ、昨日ちょっと調子乗ったときのこと、そういう心配して怒っていたのかと分かった。
あのメンバーならないでしょうと思ってやったことでもあるので、正直にそういうとチョップが返ってきた。

「ばーか。」

そう言って帰った月島に、「なんだとー!」と叫んだ時のことを、後でいろんな人に聞かれて困ることになる。

――――――――――――――

「わ。」

仕事から戻ってコートを見ると、烏野は梟谷と試合をしていて、
日向くんが木兎さんから教わったフェイントを早速使っている所だった。
してやられたような顔の赤葦さん、新鮮!

「せめてこの合宿メンバー中最強の梟谷から1セット?ぎ取って帰ろうや!」

そこからの試合はすごかった、というか面白かった。
烏野の他のメンバーも調子が良さそう。
それもこれも、

「わー!超インナーパス!!」

「憂さん、さっきから主に梟谷のプレーで盛り上がってるね・・・。」

「あっ、す、菅原先輩!すみません!木兎さんが面白くて、あの・・・。」

「まぁ梟谷の4番、この合宿メンバーの中でも特出したスパイカーだしなぁ。」

「全国5本の指に入るスパイカーですもんね。」

「ええっそうだったんだ!確かに月バリで見たことあるかもしれない・・・。」

月バリと聞いて少し身構えた。
私も一回だけ月バリに載ったことがあるのだけど、それには気づく気配がなさそうでひとまず安心する。

「それよりさ、朝日奈ちゃんは月島の応援してやってよ。」

「・・・?応援してますよ。」

「いや、なんていうかこう、分かるようにさ!」

「?」

「昨日さ、夜月島すごい不機嫌ぽかったから一緒に帰ってきた日向に聞いたんだよ。日向もよく分からなかったらしいけど、とりあえず原因が朝日奈ちゃんらしいって聞いて。」

「は、はぁ。」

「ほらほら。ちょっと何か言ってみて!」

こ、これはいじられてる?!と思いつつもなかなか新鮮な感覚だったのでとりあえず乗ってみる。

「つきしまー!いけー!」

恥ずかしながらもそう叫ぶと、気が付いた月島が口を開けてなにか言おうとしたけど途中でやめて、プイッと顔をそむけて試合に戻って行った。
怒っていないみたいだからどちらかと言うと照れの方かな。
山口くんが言ったとしてもあんな感じだろうしね。


その後も木兎さんと梟谷のチームの人たちが面白すぎて、そちらで盛り上がってしまったので菅原先輩に「ちょっと、朝日奈ちゃん?」と肩を叩かれることになった。


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