24


「4番のスパイクは止められなくても手に当てるだけでいい!」

梟谷の4番、木兎さんのスパイクをみた烏養コーチがそう言った。
それを聞いた仁花ちゃんが清水先輩にブロックの違いを聞いていた。
ソフトブロックとキルブロック。
私は身長が高い方じゃなかったし、あんまりブロック得意じゃなかかったなーなんて思い出していた矢先。

「止めなくてもいいんですか」

「?!」

「・・・いいや?どシャットできんなら願ったり叶ったりだ。」

その後の月島のキルブロックは一目で分かるほど見違えていた。
黒尾さんが笑ってる。
W主将との練習が役にたっているんだろうけど、その練習相手の木兎さんが引っかかってるってことは
今初めて本気になった・・・?

ジト目で見ていたら、日向くんから顔を逸らした月島は私の方を見て笑った。
まったく・・・計算高いやつ。
あとは1年コンビだけど、誰かが変わろうとしてこういう空気になることは、よくあることだ。
あのバレー馬鹿2人なら必ず乗り越える。
心配なんてしてない。
仁花ちゃんがついているしね。
だから私は・・・。

「お姉さ〜ん、ちょうどいい所に。ちょっとこっちこっち。」

昼間の練習が終わって、後片付けが終わって、
まさにもう一方の練習でも覗きにいくかなと第3体育館の近くまできた所で黒尾さんに手招きされた。
からかったような招き方をされてものだから私は思いっきり顔をしかめた。

「・・・・・・。」

「ちょっと、顔。」

「なんですか、黒尾さん。」

「これから3対3やるんだけど、審判兼、スコアボード係やってくれない?」

”時間があれば〜”とか入れない所、私が見に来たって分かっているんだなと思った。
気が利くんだか、利かないんだか。
黒尾さんのこういうところ、結構好きだったりする。
だから「いいですよ」とか上からじゃなくて「こちらこそ」と答えると、黒尾さんは私の頭に手を置いて撫でるように少し動かした。

「ま、オタクの眼鏡くんと今日はおチビちゃんもいるしね。」

「え”?!ひ、日向くん今日ここにいるんですか。」

「なんかあのセッターくんと揉めてんだろ、知ってるぜ〜。
ま、いいんじゃないの。こっちもそれで3対3できるわけだし。
すげえメンバーだぞ。」

「は、はぁ。」

こうして元々チラ見だけして夕ご飯でも行こうと思っていた私は第3体育館で補佐業をすることになった。

「お〜い。マネージャーゲット!」

「おぉ!でかした黒尾!」

「何つかまってんの、朝日奈。」

「いや、べ、別に・・・?」

「答えになってないし。夕飯は?」

「まだです。」

「はぁいそこイチャイチャしなーい。3対3やるよ〜。」

「どこがそう見えるんですか・・・。」

イマイチ展開の速さとテンションについていけなかった私だったけど、気が付いたらおとなしく審判兼、スコアボード係をやっていた。
高身長全員MBチームと、低身長(といっても2人は180cmは越えているので日向くんだけ)Sありチーム。
かなり偏った攻めと守りのチームで、黒尾さん曰く”昼間できない”練習をしているようだ。

あ、月島ちょっとサボった。
そう気づいた瞬間。

「ブロック極力”横っ跳び”すんなー!間に合う時はちゃんと止まって跳べー!」

「―ハイ!」

これまたいい先輩がいたものだと少し泣きそうになってしまった。
その後、ちゃんと止まって上へ跳んだ月島が日向くんのスパイクをどシャットして、1セット終了。

時間的にもう終わりであとこのセットまでという話になっていたので、スコアボードを元に戻して、
ちょっとした反省会をしている皆に夕飯の時間のことを言おうとコートの方を向くと、
バッチリ、目があった。


赤葦さんと。


prev next