今日も空は青く突き抜けていた。

あの日から彼はずっと、片時も離れず自分の傍にいる。
その背中ばかりを今日までずっと見つめていた。いつかまた振り向いて、自分の目を見て、誉めて、照れて、笑ってくれると信じて、そしてほんの数時間前に地下鉄に乗ったのだった。

空が見たかった。
トリミングされた写真のような幾何形態から何億倍にもはみ出した大きな空が見たかった。下を向いたままホームに降りて階段を登った。

外泊許可は三度目で、今日は寮にも帰らない。
エレベーターに乗り込んだ。
もうすぐ会える、きっと今日こそ彼に会える。ドアをあける。まっすぐ進む。

彼がいる。やっとここまで来た。やっと顔を見てくれた。やっと顔が見られた。やっと笑ってくれた。思わずいつもより勢いをつけて彼に抱きついた。そしてそのままアスファルトに叩きつけられた。

屋上のフェンスは錆びていた。


- ナノ -