落ちきった涙、小さなバッグだけは手放さずに、落ちきった心持ちのまま、底はまだ見えず、平良は微笑んで約束の場所へ立つ。
待ち合わせ相手は平良を舐めるように検分した後で、行こうか、と言った。

お眼鏡に叶った安堵と古びたラブホテルの無人精算機の不安が頭の中を引きずり回す。

シャワーを浴びて!ゴムをつけて!
未だかつて平良の懇願が聞き入れられたことはなかった。そのまま無理やりに体を押し開かれて、今の今まで顔も見たことのない男に捩じ込まれ、かき回された。
悲鳴に近い呻き声を押し殺してただ気持ちいいと主張して涎を垂らしながらもっともっととねだる。
そうしないと貰えない。男はそうしなければ満足しないのだと自分がよく分かっている。だから金が貰えない、金が欲しい、金がない、金がない、いくらあってもない、金をくれ!
それだけを考えながら見知らぬ男の絶頂を受け入れる。中学生の体に満足した男は、平良の髪を戯れに一度だけなぜて万札を握らせる。

平良は知っていた。若さの価値を存分に活かす方法を。
平良は寂しかった。初めて見知らぬ男に無理矢理脚を開かされてからずっとその痛みが恋しかった。

自室のボストンバッグに無造作に詰め込んだ一万円札は一体何枚か。いつかその無数の札を、いっぱいに広げた手から、屋上から自分の身体と一緒にばらまいてみたい。
平良の至上の夢は、18歳の誕生日に叶える予定である。



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