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「#エロ」のBL小説を読む
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水の流れる音。食器が擦れる音。それから肉が焼けるよい音に鼻腔を擽る良い香り。
セブンスヘブンの調理場に並んで立つnameとティファは、それぞれの役割をこなしつつ会話に花を咲かせていた。


時は夕暮れ。
そろそろ夕食が待ち遠しくなる頃合に、セブンスヘブンのオーナーであるティファは店を閉め、今日の夕食作りに取り掛かった。
いつもより早い店仕舞いに普段のnameならば首を傾げるところだが、今回はその理由をよくわかっているため問い掛けるような野暮なことはしない。

クラウドが戻って来ているのだ。

ストライフデリバリーサービスという運送業を始めたクラウドは、日がなあちらこちらへと愛車であるフェンリルと共に走っている。
それはエッジ近辺の時もあればミッドガル近辺でもある。
と思えば、ずっと遠くのジュノンエリアまで行くこともあるのだとか。
そんな多忙なクラウドは現地で身体を休めることが多かったのだが、今日は珍しくセブンスヘブンに羽を落ち着けている。
ティファはそれが嬉しいのか、やけに張り切った様子で夕食を作っているのだ。
豪勢な肉料理にマリンもデンゼルも大喜びで、料理はまだ出来ていないというのに率先してカウンターやテーブルの水拭きをしてくれている。
その嬉しそうな様子をカウンター越しに眺めながら、nameは使用した調理器具や店で使用した食器を洗っていた。

「うん、いい感じ。name、もうちょっとでできるからクラウドを起こしてきてくれない?」

焼けた肉を欠片ほどに切って味見をしたティファは、その味と食感に上出来だと頷きながらnameを向いた。

多忙なクラウドはセブンスヘブンに着くなり仮眠をとる、と言って二階に上がったきり。
そこまで疲れているのかと皆心配した様子だったが、クラウドを起こさないようにここ数時間様子を見に行くことなくそっとしておいたのだ。
そろそろ料理ができるのだろう。頼まれたnameは頷いて、早々にシンクの中の物を洗いにかかる。

「nameお姉ちゃん、あとはわたしがやるよ!」

が、服の裾を引かれて意識がそちらに向く。
ティファとnameの間にちょこん、と立つマリンが、任せろ、と言わんばかりに笑顔を浮かべながらnameの言葉を待っていた。
デンゼルと一緒にしていた水拭きは終わったのだろうか。
先程まで居たマリンの居場所を視線で辿ると、そこにはまだいそいそとテーブルを拭くデンゼルの姿が。
こちらの視線に気がついたのか、デンゼルはnameと目が合うなりにっこり笑って頷いてくれた。
こっちは大丈夫だから、マリンに任せていいよ。
そんな意図を汲み取った。

「ありがとう、マリンちゃん。じゃあお願いするね」
「任せて!」

場所を代わったマリンが意気揚々とスポンジを手にする。
その様子が本当に楽しそうで、見ているこちらが微笑ましくなってくるようだ。
掃除をするデンゼル、洗い物に従事するマリン、それから今度は副菜を作り始めたティファを見渡してから、nameはセブンスヘブンの階段を静かに上がった。



◇◆◇



木造建築のセブンスヘブンは忍び足で歩いてもその木の音を響かせる。
老朽化しているわけではないはずだから、きっと自分の歩き方が悪いのだろう。
疲れて眠っているクラウドを起こしてしまわなければよいのだが。
と言ってもこれから起こすことになるのだから、結果として変わらないのだ。
なんて悶々と考えながら階段を上りきったnameはクラウドの部屋の前で立ち止まる。
ノックをするべきか否か。
相手は寝ているとはいえ、不法侵入はいけないことだ。
ノックをするほうに軍杯をあげたnameは、気持ち静かめにその木の扉をノックした。

「クラウド、起きてる?もうすぐ晩御飯だよ」

いち、に、さん。
それを五度ほど繰り返しただろうか、何れにせよこの扉の向こうからは音も声も何も聞こえてこなかった。

クラウドと食卓を囲めるのだと、ティファ達の嬉しそうな姿を思い返したnameはなんとしてもクラウドに起きてもらわなければならなかった。
声は掛けた、返事は無かったが、それでも声は掛けたのだ。
自分を正当化してその扉をゆっくり開ける。
もう一度、二度、声を掛けながら。

「クラウド?」

茜色の陽が射し込む薄暗い部屋。
大して広さのない一室の中心に佇むその姿を見つけることは、とても容易なことだった。

「起きてたんだね、おはよう」
「ああ、おはよう」

クラウドの背に声を掛ければ、返事はすぐに貰えた。
こちらに背を向けたままなのが気にかかり、nameは回り込むようにしてクラウドの目の前に移動した。

「いったい何を」

俯いたクラウドの視線を辿るように見下ろせば、その手元に小型の機械が握られていた。
機械、なのだろうか。クラウドの手の平よりも少しばかり小さく、針が突き出た小物。
どこかで見たような気がする。
nameは小首を傾げてクラウドの手元を覗き込んだ。

「それは?」
「ああ、ピアッサーだ」

ピアッサー、という言葉にようやくnameは合点がいった。
アクセサリーを装着するため、人体に穴を開ける簡易器具だ。
人体に穴を開ける、という文字面はとても恐ろしいが主に耳朶に用いられる物で、医療機関に掛からずとも個人で容易に使用出来る程に簡便だ。

クラウドは左耳にピアスの穴を開けている。
覗き込んだ視線を彼の金髪がかかる左耳に滑らせれば、そこには愛用のピアスがきらめいている。
それは左耳だけで、右耳は一つも開けていなかったはずだ。
右耳も開ける予定なのだろうか。
ピアッサーをいじるクラウドは視線を上げず、ずっと手元を見たままだった。

「右耳を開けるの?」
「いや、左耳だな」
「左を?」

もうすでに開けているのにもう一つ開けるつもりなのだろうか。
世の中には軟骨にまで穴を開けるひともいると聞く。
クラウドがそこまでしたいというのなら止めはしないが、なんとも彼らしくない、とnameは感じた。

「気に入ったピアスを見つけたんだね」

右耳につければよいのではないか、なんて無粋な意見は口にしない。
クラウドが左耳に拘るなら人の好き好きだ。nameが口を挟めることではない。

「ああ、これ」
「花?可愛い色と形だね」

差し出されたのは花の形をしたピアス。
金色の花弁の中心に緑色と淡い青色が混じりあった配色で、可愛らしくもあり、美しいともとれる。
しかし、クラウドが現在身につけているピアスとは随分系統の異なる物のように思える。
狼を模した黒銀のピアス。それがクラウドのトレードマークのうちの一つだと勝手に思っている。
その狼の上に花を咲かせるのだろうか。
なんだか左耳だけ重くなりそうだな、なんて要らぬ心配をしてしまった。

「そうだ、ティファがね、もう少しで晩御飯できるから降りて来てって」
「似合うよな、絶対」
「……うん?クラウド?」

クラウドを起こしに来た目的を伝えたのだが、クラウドは俯いたまま。
ぼそりと呟かれた言葉は未だピアスの話題で、寝惚けているのか、とnameはクラウドの肩を叩くためにその腕を伸ばした。

が。



「うん、絶対似合う」



反応出来ないほどの速さで腕を掴まれる。
ようやく顔を上げたクラウドはやけににこやかで、驚くnameに顔を寄せて嬉しそうに笑った。

「クラウド?あの、手を」
「俺、nameとお揃いの何かが欲しかったんだ」

クラウドが一歩、また一歩と詰め寄ってくる。
退くようにnameも後退するが、じりじりと詰め寄られるばかりだ。

「同じ傷とかだったら俺はすごく嬉しいけど、nameを傷つけるのは嫌だから」
「ねえ、なに、何言ってるの」
「ああ、でもピアスの穴も傷つけるうちに入るのかな。ごめんなname、痛いのは一瞬だから、きっとな」

視界の隅で夕陽に照らされる物。
生える針が赤く光った。

「ま、待って、それ、まさか」
「うん、nameのために買った。俺が開けたくて、買った。俺の手でnameを傷つけたくて、買った」

傷つけたいだの傷つけたくないだの、言っていることが滅茶苦茶だ。
だがその言動よりも、クラウドの言葉から自分の身に降りかかる事のほうに気が向く。向いてしまう。


クラウドがnameの耳に無許可で、かつ本人の意思に関係なくピアッサーで穴を開けようとしている。


「や、やだっ、やめてクラウド!」


もがく様にしてクラウドの腕を振りほどこうとするが、クラウドの手は離れるどころか力を増す一方で。

「私そんなことして欲しいなんて言ってないよ!」
「俺はして欲しい。開けさせて、name」
「嫌だっ、やだってば!」

抵抗が激しさを増す。
なんだって、どうしてこのひとは話を聞き入れてくれないのだろう。

縺れる足はクラウドの足払いを受け、後ろへ崩れ落ちる。
尻もちをつく形で落ちてしまったのはベッドの上。
扉とは正反対にある場所で、逃げ場が無くなってしまったことに顔が青ざめてゆくのが自分でわかった。
それでもなんとか抵抗したくて、ベッドの奥へ奥へと後ずさるようにしてクラウドから逃げる。
壁の隅にぺっとりと背中を張り付け、ゆっくりと迫り寄るクラウドに向けて何度も拒否を口にした。

「ひとが嫌がることをしちゃいけないって教わらなかった?」
「大丈夫、痛いけど、痛くないから」
「話を聞いてよ!私本当に嫌なの、痛いのは嫌なの!」

目が、本気だ。本当の本当に、穴を開けようとしている。
同じ言語を用いている筈なのに一向に伝わらなくて、nameは恐ろしさに息を震わせる。
痛いのは嫌だ。耳に穴を開けるなんて痛いに決まってる。
それに、ピアスを付けたいと思ったことなんてない。
いや、少しはあったかもしれないが、耳に装飾品をつけるなら穴を開けないイヤリングでnameは充分なのだ。
それを伝えてもクラウドは聞かず、届かず。
聞こえてはいるのだろうが、言葉が、拒絶が届いていないのだ。

怖い。クラウドが、怖い。

クラウドはいつだってnameの言葉を聞き、意思を確認して、導いてくれていた。
時々話が通じないことがあったけれど、それでも今のこのような状態程ではなかった。
なんで、どうして。
目の前にいるのがクラウドじゃない何かのように思えて、恐怖からnameの瞳には涙が滲んだ。

「やだ……っ、ティファ!来て……んっ」

大声を上げて階下にいるティファに助けを求めるが、クラウドの大きな手がnameの口元を覆った。
壁に手をつけられ、至近距離で覗き込まれる。
これ以上退がることが出来ず、せめていやいや、と首を横に振るがクラウドは笑うだけだった。

「そう嫌がられると興奮してくるな」
「んーっ!んんっ」
「ああ、いいな、その無理矢理されてる感じ。もっと嫌がってもいいんだぞ。その分痛い思いをするのはnameだけどな」

はぁ、と熱い吐息を吐くクラウドの頬は紅潮している。
それが夕陽のせいだけではないことを、nameはわかっていた。
足を広げさせられ、その間にクラウドの身体が割って入る。
その腹を蹴飛ばすことが出来なくなってしまい、nameの足先はベッドシーツの上を滑るだけ。

「先ず消毒だな」

耳に冷たい何かを当てられ、nameは大袈裟なほどに身体を跳ねさせた。
その反応に気を良くしたのか、クラウドはくつくつと笑いながら消毒用の脱脂綿をぬるぬると塗りつける。
必要のない部位まで消毒していることなんて、クラウドはきっと分かりきっている。
片手でよくいとも容易く行えるものだ。

「name」

ぴとり、と。耳朶が何かに挟まれる。
一点、尖端が当たるそこは先程見たピアッサーの針が添えられている部分だと見なくてもわかる。
怖くて、恐ろしくて仕方がない。
ひ、ひ、と引き攣った呼吸音はクラウドの手の平に吸われて消える。

「刺す、ああ……いれるからな。どうやっていれてほしい?ゆっくり?それとも思いっきり?」
「んんっ、ん」
「そうか、一気にいれてほしいんだな。そのほうがきもちいいもんな」

刺す、という単語をいれる、という言葉に置き換えた意味などnameにはわからない。
どちらにせよ痛い目に合うことに変わりないのだ。気にするだけ無駄というもの。
けれどきもちいい、という言葉には全力で拒否を示したい。
何がきもちいいものか。痛いだけの行為に快楽を見い出せるはずもない。
そんなの、痛みで心地良さを得られる特殊な性癖の持ち主だけだ。

口元を鷲掴みにされて、頭を振ることも叶わない。
もう、ダメだ。この鋭い針を受け入れるしか。
ぽろぽろと恐怖の涙を流すnameは、ほんの少しでも痛みを逃がせるように堅く目を瞑った。
そのnameの様子を間近で観察しながら、クラウドは。

「いくぞ、いれるからな、イく、からな」

怖い思いをしているのはこちらなのに、どうしてクラウドのほうが震える吐息を漏らすのか。
でもクラウドの場合はnameと同じ恐怖を感じているわけではなくて、これは、きっと、確実に。


じゅぐん。


耳元で肉を絶つ音が骨を伝って全身に響いた。


「――ぃ、んんぅんッ!」

突き刺す鋭い痛みに、nameの身体は大きく揺れる。
跳ねさせた肩は強張り、痙攣したようにぷるぷると動いてしまう。
痛みを逃がすためにシーツを乱す足先も同じようにガタガタ震えていて。
クラウドが足の間に割って入っているこの様子を後ろから捉えたら、まるで情事の最中のように見えてしまうかもしれない。
だが実際はそんな甘くも酸っぱい関係ではない上、強いられているのは苦痛と恐怖だ。

「ぁ、っ」

nameの耳朶にピアッサーの針を突き刺したクラウドは、妙に甘い吐息を吐く。
恐怖からくるnameの震えとは違う、正反対の。


性的興奮からくる、甘い、歓喜の吐息。


「ん、ふ、ひっ、ひ……」
「ああ、name、name、きもちいい?イった?なあname」

痛みと衝撃が引かず、引き攣った呼吸をし続けるnameの口元からクラウドが手を離す。
大声を上げる余裕なんて、ない。もう、致されてしまったのだから。

針を抜かれる。
その生々しい音も、また訪れる痛みも、クラウドのおかしい様子も、なにもかも怖くて、nameは涙を流し続けながら啜り泣くだけ。
そんなnameを見てまた甘く息を吐いたクラウドは、片手をnameの腰に回して引き寄せる。
元々隙間などない程に密着していたのだが、引き寄せられて、相手の体温すらわかってしまうほどに肌を寄せられてしまう。

下腹部に擦り付けられるクラウドの身体。
何かの行為を模すようにゆるゆると腰を振り、nameの体に触れさせている部分は、なんだか妙に生温かく、湿っている、ような。


「すぐに花のピアスをつけてやりたいけど、先に肉が塞がるまでこの透明なピアスをつけるんだ」
「やだ、もう、いや、痛いの、いやぁ……っ」
「ああ……いいな……怯えてるname、堪らない」


耳朶から首筋にかけて伝う一筋の血の糸を、クラウドの舌がぬるりと舐め上げる。
ちゅ、ちゅ、と緩慢に行なわれる行為の間にも耳朶はじくじくと痛み、血を流し続けていて。
これが正しいピアスの開け方なのかどうかなんて、nameが知るはずもない。

「name、いれるよ、いれるからな」
「ぃ、んっ」
「しばらくこれは外さないでいてくれ。穴が塞がるまで、な」

開いた穴に何かを埋め込まれる。
その感覚すら怖くて、恐ろしくて、クラウドが、恐ろしくて。
またnameはびくびくと身体を震わせる。
気を良くしたクラウドは涙に濡れる頬を撫で、腰を撫で、髪を撫で。

「きもちよかった?俺も、きもちよかったよ。nameにいれた瞬間、俺」

衣服の裾から、クラウドの指先が入り込んだ時だった。


「nameー?クラウド起こしたー?」


階下からティファの呼び声が聞こえてきた。
助けを求めたかったひとの声が、遠い。

ぴたり、と動きを止めたクラウドは名残惜しそうにnameから身体を離し、焦点の定まらないその目元に優しくキスを落としてから部屋を出て行った。


起きてる。
おはよう、晩御飯できたから食べましょ。あれ、nameは?
ああ。name、降りて来てみんなで食べよう。


開けられたままの扉からふたりの会話が聞こえてくる。
よくも、よくも、平然としていられたものだ。

茜射す一室。
乱れたベッドの上で乾かない涙を静かに流し続けるnameは、泣き濡れたこの顔をどうティファ達に説明しようか、痛む耳朶も含めて鈍い頭を悩ませた。




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■リクエスト内容

相手はFF7ACのクラウドで、SS・お題にある○○しないと出られない部屋設定
夢主の設定は佐森のお好み
クラウドが夢主とピアスをお揃いにした過ぎてピアスを開けさせて興奮しちゃうお話
ちょっと変態チックなクラウド

匿名様、この度はリクエストありがとうございました。
弊サイトの変態クラウドが大好きとの嬉しいお言葉を頂戴しましたので変態要素を盛ってみました。
ピアスがお揃い、とのことだったのですが、クラウドのピアスはなんだか特注なような、そこら辺で売っていないような気がしたので、先ずはお花のピアスにしました。
ゆくゆくはクラウドが自分のと同じ物を見つけて夢主にぶっ刺すんだろうなぁ、と妄想しております。
その際夢主の耳に開けたピアスホールが小さくて、イヤイヤする夢主を縛り付けながらまた変態プレイで拡張しそうな予感がしますね。
そんな妄想を垂れ流しました。少しでもお楽しみ頂けましたらば幸いです。
リクエストありがとうございました。



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