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佐森さんには「青空に手を伸ばした」で始まり、「明日はどこに行こうか」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば6ツイート(840字)以内でお願いします。



青空に手を伸ばした。
人間の短い腕では当然届く筈も掴める筈もないのだと知っているけれど、今だけは、今だけはそうしていたかった。
空の青の海の中を気持ちよさそうに鳥が飛んでいる。白い雲の流れに沿って、東に流れてゆく。
いいなあ。鳥は自由に空を飛べて。
私に羽があったのなら、何処までも飛べてゆけたのだろうか。何にも縛られること無く、自由に生きられるのだろうか。
いや、必要なのは羽ではない。一番欲しいものは自由な足と、自由な身体と、自由な手。ああ、今は腕だけは一時の自由を得ているのだったか。

「ちょっと、nameを袋から出したの誰」

苛立ったような声が遠くから聞こえる。草を踏む音が近づいてきて、声も近づく。ああ、やだな。こちらに来ないで欲しい。

「いや、だってよ、いつまでも袋詰めじゃ可哀想だろ」
「勝手なことしないで。nameが何処かに行ったらどうする気」
「睨むなよカダージュ。ロッズが泣くぞ」
「おいヤズー、俺は泣いてねぇよ」

三人のテンポのよい会話。知りたくなかったけれどなかなか気心の知れた関係らしく、私にとってはとてもよい迷惑であることこの上ない。
青空に伸ばしていた手を、黒い革手袋に包まれた手がやんわりと掴んだ。
視界に入るのは銀色の髪と、翡翠の瞳。幼少期のあの子によく似た容姿。けれど狂気を孕むその笑顔はあの子と似ても似つかない。

「ああもう、縄まで外して。これもロッズ?だとしたら後で覚えてなよ」
「ちげーよ、それはヤズーが」
「全部ロッズ」
「おいこら」

軽い口喧嘩。叩き合う軽口。微笑ましくもなんともないその光景に、私はただ身震いをすることしか出来なくて。
合わせられた両腕に再び巻かれる太い縄。それごと身体を包む物の中に収められ、徐々に閉じられてゆく。暗くなってゆく視界。ああ、待って、いかないで、消えないで、青空。

視界がまた闇に染まる前、最後に見たのは、聞こえたのは、眩しい笑顔と嬉しくない言葉。


「明日はどこに行こうか」



840文字


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