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「#エロ」のBL小説を読む
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佐森へのお題は〔唇を塞ぐ〕です。
〔モノローグ禁止〕かつ〔「女性」の描写必須〕で書いてみましょう。




※ライトニング→夢主描写有り
※女性同士




白く、薄い手の平がnameの口元を塞いだ。
問うた答えを拒むように。何も話すなと言うかのように。
背を壁に預けた状態で見上げる彼女はいつもの凜とした佇まいを潜め、切れ長の目元に収められた秘色色(ひそくいろ)の瞳を彷徨わせてから俯いた。
撫子の花のように可憐で美しい色をした髪が、その肩から一房滑り落ちるのを眺めながらnameはライトニングの問いかけの真意を探る。



恋愛の形はひとそれぞれだ。一生に一度の恋だったり、数多の恋に生きる人間だっている。
異性同士の恋愛が常識的だという傾向はあれど、同性同士だって恋に落ちることだってある。
男性同士、女性同士。そのことに嫌悪を示す人間もいれば、好意的に受け入れる人間がいるのも事実。
nameは後者だ。"好き"という感情に性別という壁など造作もないことなのだという持論がある。
性別だって、出身だって、国が違ったって。ひとりの人間を愛する気持ちに障害や区別など必要だろうか。いや、ない。
実際に同性同士の恋愛を目にしたことがあるかと問われれば無いと答える他にないのだが、それでも自分は同性間の恋愛に関して理解のあるほうだと思っている。。

が、それを自分自身が体験するのは人生で初めてだ。

唐突に、やんわりと壁に押しつけられて告げられた言葉。
回りくどい言い方ではない。直球的で、言葉を濁すことを知らない彼女らしい真っ直ぐな愛の告白。
目力も言葉も強いのに声音はたどたどしく、緊張や不安が伝わってくるかのようだった。

告白には返答が必要だ。それがイエスであれノーであれ。
けれどnameが答えようとしたのはイエスでもノーでもなく、ライトニングがどうしてその告白に至ったのか尋ねようとするもの。
何故このようななんの取り柄もない凡人なんかを、ライトニングのような美しく、気高く、強く、周りを惹きつける魅力に溢れた女性が好むのか。
口を開きかけたが、ライトニングの手の平に塞がれてしまってはその言葉も発することができない。

答えを拒まれている。
いいや、聞くのを恐れている。

巨大な怪物や召喚獣という未知の存在、それから敵意剥き出しの大勢の兵士に囲まれた時でさえ恐れを見せなかったライトニングが、こちらの言葉を恐れている。
何を恐れる必要があるのか。もしかすると、彼女はこちらの拒否を察しているのだろうか。


ライトニングは美しい女性だ。
モデルのように長い手足に、鍛えられたしなやかな筋肉。輝きを放つ撫子色の髪は風に撫でられるたびに薔薇の香りがする。
扱う武器は剣で、ライトニングのような細身の女性がはたして振るえるものなのかと心配したことがあったが、彼女の戦う姿を一目見てそれは杞憂だったとすぐに悟った。
力で押す男性的な戦い方ではなく、敵の弱点を一瞬で見抜き素早い動きで的確に討つ。
剣線が稲妻のように綺麗に弧を描く様子を初めて見たのだ。
男性の戦い方を"剛"とするなら、ライトニングは"柔"であり"閃"。
男性に引けをとらない武勇に見惚れた時だってあった。

戦い方のとおり、彼女は内面も勇ましかった。
自分よりも格上の敵を恐れない。勝利に対する自信に溢れた姿は本当に頼もしいの一言に限る。
ただ、勝利に固執することはないのも彼女の勇ましさの中にある柔軟さゆえ。
いつだって冷静に戦況を見極めて退き時を誤らない。
行動を共にする仲間だって、彼女の指揮に信頼を置いていた。

つらつら述べてしまえばライトニングが如何に武人であるかということばかりになってしまうが、そんなことはない。
話しかければ柔らかく微笑んでくれるし、向こうからだって事無くとも話題を振ってくれる。
気がつけば隣にいることもしばしばで、戦闘要員でない自分のことを気に掛けてくれているのかと自己完結していたのだが、仲間のひとりである拳を振るう大男が傍にいたいだけなのだろうとこっそり言ってきたことを思い出した。
ライトニングは言葉こそ尖っていることがあり、誤解されがちな言動をして勘違いを招くこともある。
整った顔立ちが拍車を掛けて圧すら発してる時だって。
けれど彼女とそこそこの時間を共にしていると、その全てが優しさの裏返しなのだということがよくわかるのだ。
まあ、たまに本音で辛辣なことを言ってしまうこともあるのだが。

容姿、武勇、内面。どれをとっても素晴らしい女性。
何もかも未熟なnameがライトニングに憧れたことは両手の指を使っても数え切れない。
そんな憧れの女性が、恋愛的な意味でこちらを好いている。
俄には信じがたい。けれど本人の口から告げられているのだから、それは何よりも信頼に値するものだ。

ライトニングと恋仲になる。
その想像は現時点でそう易々とできるものではない。だから軽々しく返答するわけにもいかない。
何より当のライトニングが真剣に告げたのだから、誠意をもって接しなければならない。いいや、接したいのだ。


口を覆うライトニングの腕にそっと触れる。
はっ、と驚いたように顔を上げた彼女の瞳は怯えるように揺れていた。
そんな顔をしなくても大丈夫だと告げるように目元を和らげ、手を離させる。
存外直ぐに解放され、nameは深く深呼吸をした。

「ライトニング、私は」

言葉を、ライトニングの指先が止める。
今度は口元を覆うようなことはせず、その細い人差し指がとん、とnameの唇の先に置かれた。
ぐっ、と近づく端正な顔。美を体現するかんばせが至近距離に迫ってきて、nameは息を呑んだ。

「答えは聞かない。私は決めたんだ」

告白には返答が必要だと思っていた。
だから今の自分の気持ちの整理をつけるためにライトニングに尋ねたいことがあったのに。
その答えを必要としないということは、どういうことなのだろうか。


ぱちぱち、と困惑の瞬きを数度落とす。

ライトニングの指先が離れ、近づいてきたのは、触れたのは。


唇で唇を塞がれたと気がついたのは、撫子色の髪が頬を擽った時だった。





・自分用メモ
「モノローグ」=「独白」演劇や映画において登場人物が一人で話すセリフ
演劇や映画の多くの場面で使われる登場人物同士の会話ではなく、登場人物一人の「独白」。自身の感情や場面に対する感想などを観客にもわかるように述べること。
【モノローグというのは声にださない「登場人物の台詞」】


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