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佐森さんには「気付いてしまった」で始まり、「必要なのは勇気でした」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば6ツイート(840字程度)でお願いします。




気付いてしまった。本当は気付きたくなかったのに、どうやら神様というものは意地が悪いらしい。
深い夜の色が漂う室内で、浅く、深い呼吸音を聞きながら私は閉じた瞼を開けないように、寝たふりを続けていた。

すでに眠りについていた私は何かの気配に意識を浮上させた。眠りが浅かったのだろうか。いつもならそんなことないのに。
カーテンで遮られた月の光が眩しい。光に慣れない瞳をしぱしぱと瞬かせ、ぼんやりと視界を動かすとそこには見慣れた金色がいた。
クラウドだ。まず私の寝室にクラウドが忍び込んでいるということについては置いておこう。深夜帯にも拘わらず、という点についてもまた同様に。
どうしたの、何か用?そう尋ねたいのに寝起きのためすぐに声が出ず、思考も働かない。私の手の平にそっと触れたクラウド。何がしたいのだろうか。そんな疑問を抱いたまま薄目で彼の行動を盗み見るように観察していた。
その時、手の平に冷たい感触。何かを握らされたと気がついたのは一拍も三拍も置いたあとだった。
これは、なんだ。
棒状の何か。取っ手のようなもの。
瞬きをして視界に手元を収める。月光を受けて一度きらめいたのは、小型のナイフだった。
意味がわからない。何故こんなものを握らされているのか。どうしてこんなことをするのか。クラウドは何がしたいのか。
憶測も考察も何もない。ただただ困惑だけが私の脳内を支配する。

クラウド。

そう声を掛けようとしたとき、ナイフを握らされた私の手が持ち上げられる。
横に一閃。緩やかな速度で動かされた刃物の軌跡が、クラウドの手の平を傷つけたのを見てしまった。
滴る血。微かな鉄の臭い。
何してるの。慌てて声を上げて身を引きたかったが、目にしたクラウドの表情に身体が固まる。
恍惚。快楽。欲情。頬を赤らめて吐く熱い吐息が私の肌を擽った。

クラウドが、私にナイフを握らせて、自分自身を傷つけて、興奮している。

わかるのはたったそれだけ。わかるけれど、意味がわからない。
見てはいけないものを見てしまった私はぎゅう、と瞳を閉じる。耳を掠めるクラウドの吐息が恐ろしい。
また手が動く。きっと、またクラウドを傷つけている。だって、こんなにもクラウドが悦楽のため息をついているのだから。
どうしてこんなことを。やめて。何がしたいの。
そう尋ねたい私に必要なのは勇気でした。



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