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佐森へのお題は〔たとえば君が消えたとして〕です。
〔二次元ネタ台詞の引用禁止〕かつ〔光の描写必須〕で書いてみましょう。




私が消えたら、どうする。

風に揺られる木々の穏やかなざわめきにかき消されてしまいそうな程の小さな声。
いつもならこんな弱気な事を口にしない。しかし迫る魔女との決戦を前に思うところがあるのだろう。
彼女はこの世界の人間ではない。幾多もの世界を渡ってきたらしいが、その術も方法も自分が預かり知らぬ事のようだ。
時間圧縮が起これば。起こってしまえば。存在が不確定な彼女はきっと世界から弾き出される。
それをなんとなく察しているから、ほんの少しだけ弱気な言葉が零れてしまったのだろう。
いいや、弱気などではないのかもしれない。
消える。その事象を受け止めて、強く前を見据えている。
どうする、どうしたい。彼女自身の答えは出ている。問いかけをぶつけてくるということは、こちらの答えを求めているということ。
俺は。俺なら。

消えないさ。消えたとしても、俺が迎えに行ってやる。

彼女がこちらを振り返る。その表情は驚いた様子ではなく、至って穏やかだ。
高い陽が射す光が木の葉の隙間を縫い、彼女に降り注ぐ。
柔らかい木漏れ日の中で微笑む彼女は口元を押さえ、くすくすと小さな笑い声を上げた。

どうしてかな、スコールならそう言ってくれると思ってた。

わかりにくい。とっつきにくい。何を考えているかわからない。
周囲からそう評価されるスコールという『個』は、彼女を前にするとその全てが取っ払われるようだ。
理解してくれている。理解されている。
唯一無二のこの存在を手放すなんて、とうの昔からあり得ないことだ。

私が消えたら、どうする。

先程の質問が脳内に反響する。
答えはとうの昔にここにある。
それを確かなものにするため、彼女の手を取り、強く握りしめた。


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