小説2 | ナノ


しろちゃんは意外と、大胆にわたしの顔を塗りたくった。
できたよお、なんてきらきらした笑顔で鏡を渡されて、鏡をのぞきこんだ時のわたしの絶望感ったら。やったのがしろちゃんじゃなかったら、もうそいつには往復ビンタじゃ済まないレベルで仕返ししているところだ。

「はやくトイレで落とさなきゃ…!」

下を向いて全速力で水道へ向かっていたら誰かにぶつかった。

「ぎゃ、」
「うわ、」

衝撃でしりもちをつく。いたたた、全然前なんて見てなかった。

「大丈夫か、…ってど、どうしたそのカッコ!」
「あ、土井せんせ…!!」

いやあああこの顔バッチリ見られた!!ひええええしかも私いま黒いフリフリドレス着てるんですけど!!!どう言い訳しろってえええ!!!

「いや、あの、そう!文化祭!文化祭の練習してて!」
「お前のクラス演劇じゃないよな?」
「いやーハッハハハ…」

もういや、惨めすぎる。しろちゃん、私あなたが大好きだけど、今日だけはきみを恨むよ。

「そういや今日はハロウィンか。うん、なかなか似合ってるんじゃないか。」
「え…ほんとですか…」
「ああ。」

あー…せんせー、優しいな。なんか救われたし癒された。…イケメンだしな。
いいなあ、大人のイケメン…

「しかし学校に不必要なものを持ってくるのは見過ごせない。」
「はいスミマセンデシタ。」

やっぱ先生は先生だな。大人の恋愛はわたしにはまだはやい。

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