小説2 | ナノ


「あれえ?どこ行っちゃったのー?」

しろちゃんごめん、いくらしろちゃんのお願いでも、絵の具顔ペイントは無理です。

机の影に隠れて息をひそめる。しろちゃんの声が遠ざかるのを待って、そうっと立ち上がった。
握っていた右手を開く。今日の収穫…久作の塩あめ一個。

「こんなはずじゃ…」
「おい、」
「うわっ!」

びびりまくって振り向いた先にいたのは先程お菓子の空箱をよこしたワカメ野郎だった。もうドブに落ちてる頃だと思ったらまだ学校に残っていたのか…どこまでも腹立つ…

「まだいたの?」
「なんだその言い草は、ホラ。」

三郎次の手のひらにちょこんと乗ったチョコボールのキャラメル味。目の前にずいっと差し出される。こわごわ手にとって上下に振ると、カラカラと乾いた音がした。ちゃんと中身、入ってる。

「…え?これくれるの?」
「お前が菓子菓子うっせーから。」
「うそ…っワカメさん、ありがとう!ヒデキ感激!」
「おお、」

照れを隠すように三郎次が視線を下げる。そして、なぜかそこで固まった。
え?
そこで私もゆっくり視線を下げてみる。目に付いた自分の服装。フリフリミニスカート、大きなリボン、…

「待って、いや、その、これには深い深い深い深すぎてそのまま潜れるほどのワケが…」

三郎次は固まって私を凝視する。ちょっと、無言やめて!

「おおおおお願いします敬語解禁して全力でお願いしますから学校で仮装してたなんてことはみんなに黙っててください!」
「…」
「さ、三郎次?」

おそるおそる問いかける。三郎次は急にはっとして、変に挙動不審にうろたえだした。

「ばば、ばかじゃねーのそんなフリフリのカッコして!頭湧いたか?そんなことしたってだ、誰も喜ばねえよ!」

三郎次が大声でそんなことを叫びながら慌てて教室を出て行く。慌てすぎて机にガンガンと体をぶつけて転びそうになりながら。

「ねえ大丈夫?」
「うるせー!」

ばたばたと走り去る音。ちょっと、ちょっとちゃんと黙っててくれるんでしょうね…!それにしてもあんな慌てて真っ赤な顔してププ、あれじゃまるで…まるで?
浮かんだ可能性を残されたチョコボールのパッケージに問いかけてみる。愛らしい目をこちらに向けたキャラクターが微笑ましそうに私を見ていた。


Happy Halloween ★ end


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