小説2 | ナノ

「晴れたら出かけるんだ!花子と約束した!」

左門の口から白い歯が覗いた。嬉しさを隠しきれないというように、口角が横にのびている。

「また条件つきのお約束か。」
「いいんだ。明日はきっと晴れだから。」


疑いも持たない左門の眼差しは俺をとらえて離さない。たまらなくなって、こちらから目を逸らした。


ああ明日、どうか必ず雨がふりますように。心が痛くなるくらいの土砂降りでありますように。

なんて無駄に祈ったって。これで明日が雨でもどうしようもない虚無感から抜け出せないで、ただぼうっと雨を眺めてることになるんだろうけどさ。

明日の降水確率なんてほんとうは問題じゃなくて、明日晴れなくても、晴れの日なんていくらでもやってくるから。左門とあいつの距離が縮むのが確実で止められないことだってことはわかってる。そこに割って入るほど面倒ごとは好きじゃない。

でもただ俺は無駄だとわかっていても明日の天気が崩れることを切に願うくらい、あいつがまだ好きであるらしい。ふう、と漏れた息がひどく寂しくその場に響く。考えれば考えるほど、馬鹿馬鹿しい話だ。

そうだもしも明日雨が降ったなら、いやこの際天気なんてどうだっていい。適当にあいつを呼び出して、不意打ちでキスでもしてやろうか。そしてあいつが拒絶の表情を浮かべたところで、そんな顔するんならいい加減左門を振り回すなと。
優しい俺が忠告してやることにしよう。

それはあいつと左門のためでもあるけれど主には、俺の最後の踏ん切りのために。


キスは雨天決行

曇り空にこそ歌声を
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