小説2 | ナノ

一緒に出かけようとさんざん言われ続け、その度にそのうちにね、とさんざん返答してやり過ごしてきた問答もついにごまかせなくなった。

「そのうちって、いつだ?決めてもらわないと困る。」

今日は流される気がないらしい左門はじいっとわたしの目を見つめてくる。凛々しい眉とさらさらの前髪を見つめて、わざとらしく指を顎に当てながら、わたしは一生懸命考えるフリをしてみせた。

「えー…じゃあ、明日。」
「わかった!明日な!」
「晴れたら、ね。」

条件つきの希望であれば、左門は必ず受け入れてくれるということを最近覚えた。進退は疑うことなかれ。まさにその言葉をどんなときも忘れない左門に困り果ててしまったわたしが、やっとこ見つけた左門を上手く手なづけるやり方だ。

「ああ、晴れたらだな!」
「明日の降水確率は50パーセントだけどね。」

嬉しさを隠さず目を細めた左門にわざと意地悪く言ってみせても、左門は「晴れるさ!」と自信たっぷりの表情をわたしに見せつけてくるだけで。
わたしはひどくきまりが悪くなる。
そんな晴れ晴れとした表情を見せつけられたらさ、もう意地悪いことなんて言えないじゃない。

それは当たっても驚かないし外れてもきっとあきらめがつく確率だから。どっちに転んでもわたしはその事実をただ受け止めるだろう。だからこの今、わたしが明日の晴れを願う気持ちは、誰にも、左門さえにも知られないまま時間に流されていく。

まだ、この気持ちは知られたくないんだ。
まだ追いかけられていたいの。

ごめんね。わがまま、許してね。


明日晴れたら海へ行こう

キスは雨天決行

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