小説2 | ナノ


「浦風せんぱいぃい!!滑り込みゲーット!」
「うわ何か来た…」

僕が花子に何度嘆息したか、数え切れない。
もういい加減普通に出てきてくれないかと思う。僕、三反田数馬はズサーと効果音がついてきそうなほど僕らの前に勢いよく滑り込んできた幼馴染の花子を見て顔をしかめた。
花子は藤内の足首を掴んで、「藤内せんぱい!おはようございます!今日もかっこいいです!キャア!」などと喚いている。本当に気持ち悪いと思う。もしも僕が藤内だったら無理やり蹴落としているレベルだ。

「ああ、花子さんおはよう。大丈夫?今床に転がったけど。」
「だ、大丈夫です!今の浦風先輩の私への気遣いのコトバでもう色々大丈夫でお腹いっぱいなので…」
「(お腹いっぱい?)そうなの?お腹いっぱいで良かったね。」
「はい…幸せです。」

会話はいつもながらまったく噛み合っていない。こんな状態でも二人はなんとも思わないのだろうか。藤内がこんなにも天然なことに最初驚いたが、一番どうしようもないのは気持ち悪いこの幼馴染だ。まったく、気苦労は絶えない。
とりあえず面倒くさいし何より僕らは暇じゃないし。花子はほっといて授業に行かないと。

「藤内、花子はいいから行こ…っだ!!いだっ!!」
「数馬どうした!?」
「やだっ数馬、足痛いの!?不運だし、たまに見えなくなるほど影薄くなるから私気づかなかった…ごめんねっ…」

花子め…今僕の足蹴ったな…もう、藤内のことになるとすぐコレなんだから…
ま、幸いまだ時間に余裕はあるし、ちょっと付き合ってやろうか。
僕って本当甘いな。

「や、大丈夫。はは。」
「はは、数馬は不運だからな。」
「数馬、これ以上数馬に不運が起こったら大変だからさっさと先にひとりで教室行ったら?むしろ浦風先輩に不運が降りかかったら私数馬のところへ殴り込みに行くかもしれないから早くひとりで授業行ったら?ね?」

とにかく僕を追い出したいのね花子は。それにしてもヒドイ言いようだ。僕をこれっぽっちも年上としてなんて見ていない。
こっちが花子のために付きあってあげようと思ってんのに…もう。

「いや、別に僕は全く構わないよ。」
「ダメです。浦風先輩に何かあったら、私…辛いですから。」
「花子さんは優しいね。」
「や、優しいなんて!浦風先輩に優しいって言ってもらえるなんて…ほんとう狙い通りです!」

ちょ、花子、狙い通りとか正直すぎるよ。本音さらけ出しすぎじゃない?いくら藤内が天然と言っても…ねえ…。本当花子はどうしようもない考えなしのアホなんだから。
そう考えたところで、足に再び激痛が走った。

「っていだだだだ!ちょっとおんなじ足蹴らないで!!」
「ごめん足が当たっちゃって。」
「そんな綺麗な蹴りは偶然じゃなかなかできないよ花子。」
「数馬に馬鹿にされた気がした。」
「やっぱわざとじゃん!」

ほんっとワガママで身勝手なんだから。僕は花子の今後が心配だよ。

「数馬と花子さんは本当に仲が良いから羨ましいよ。」
「浦風先輩!!それ本当ですか!じゃあ私と仲良くなりましょう!数馬とかいいんで!ホントいいんで!」

はいストーップ。僕とかいいって二回も繰り返さないでねー。

「花子、ウザイ女は嫌われるからね。」
「黙ってマジちょっと黙って数馬の利用価値は浦風先輩とおんなじクラスってことと、数馬が一緒にいることで浦風先輩が目立たなくなってライバルが減るってことだけなんだから。」
「ウッ…いつから花子はこんな子に…この性格の悪さが僕は悲しい。とても友達に紹介できない。」
「浦風先輩!今度逢引しませんか!?」
「ついにシカト!?花子さあ、もうちょっと考えて行動して誘わないと「いいよ。」ええええぇえ!?」

信じられない。いいよとか、藤内どうしたの。本気と書いてマジどうしたの。藤内ならこんな残念なやつじゃなくてももっと可愛い子選べるだろうし正直二人話噛み合ってないし花子は性格悪いし…ってこれは僕に対してだけか。…僕……。

「ったあああ!!!」

女の子らしさのカケラもないガッツポーズをする花子を尻目に、僕はこそこそ藤内に耳打ちする。

「藤内、熱でもあるの?」
「ないよ。どうして?」
「だって逢引…」
「ああ、だって花子さん楽しいし。」

君は神か。ゴッドか。藤内か。もう藤内…なんかもう…藤内…
嬉しいんだか不憫なんだか安心したというか不安というかもうなんか知らない。知らん。

「かずまー!!」

花子がそれは嬉しそうに僕にVサインした。よかったね。僕も嬉しいよ。君の僕へのワガママと酷い扱いが少しでも改善されますように。
そう思いながら僕はぎこちない笑みを作った。



だから僕は願うよ

(そして君たちがしあわせであるように)


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3位、浦風藤内でギャグです。
数馬くん相手みたいになっていますっが…浦風くん…です!(必死)

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