小説2 | ナノ

「三郎次くーん、兵助くんがね、今日は火薬委員会の会議があるから、授業が終わり次第集合って!」

食堂で声をかけてきたのはタカ丸さんで。俺は振り返って、了解の意を伝える。ニコニコといつもの笑顔を振りまくタカ丸さんは、また後でね、と去っていった。

「ボケッとしてんなぁ。」
「いって!」
「四年生がどーかしたか?」

久作と左近が頭を続けざまに叩いてきて、手に持っていた定食が揺れる。あっ味噌汁こぼれた。

「おい、こぼれただろ!ふざけんな!」
「きゃあー三郎次くんこわーい。」
「っ女真似すんな!気持ち悪い!!」
「はあ?マジで怒るなよ。いつものお前のひとことの方がよっぽど酷いだろうが。」
「確かにそうだな。」
「うるせー」

いつもの3人で軽口を叩きながら腰掛けて、定食に箸をつける。今日も食堂は騒がしい。いつも通りおばちゃんの料理はうまそうだ。当然腹は減っているはずなのに、なかなか箸が進まない。喉の奥に何かが詰まっているみたいだ。ぼんやりと昨日の情景が浮かぶ。慌てて、白米をかきこんだ。

「三郎次、白米だけでよくそんな食えんなあ。僕は無理だ。」
「ゴホッ」
「むせてるし。あれ三郎次、目の下にクマあるじゃん。どーした?」
「別に。」

口を結んで顔をしかめれば、先ほどのタカ丸さんの顔が浮かんだ。俺には無理だ。あんなニヤついた顔、できるわけない。例えそれが近道だとしても、長い間苦労して積み上げた壁から弱さを晒すなんて、どうして容易くできるだろう。
息を吐いて食事に集中しようとする。目の前に並ぶのは甘いかぼちゃ、芋の煮物。...こういうものが女子は好きなのだろう。あとは花とか。あとは、何だ?
あの女子、俺を好いていると言った花岡は…一体何が好きで、何をしたら喜ぶんだろうか。

「...なんかなあ」
「ああ。なんか、か。」
「あ?」
「今日の三郎次、なんていうか...」
「左近も思ったよな。お前、今日気持ち悪いわ。」
「ハァ!?」
「久作も思ったよな!三郎次、芋つついてため息吐くなよ!面白すぎるだろ!」
「ざっけんな!!」
「きゃあー短気な三郎次くんこっわっいっ」
「久作!!!!」

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