小説2 | ナノ

「で、なんでまた俺のところに来たんだよ。」
「三郎次には、わたしのプレゼント選びを最後まで見届ける義務があると思うの。」
「なんでだよ!」

クリスマスまであと2日。俺はまたまた花子とコーヒーショップにいた。突然花子に呼びだされたときは即座に断ろうと思ったのだが、一瞬左近の顔が頭に浮かび、こうして花子の思惑通りのこのこ来てしまったのである。…まあ今日はたまたま暇だったからな。

「とりあえず、久作と四郎兵衛にアドバイスをもらって、わたしも色々考えました。」
「ほう。」
「で、考えた結果がこれです。」

花子が差し出したのは、真っ赤なサテンのリボンだった。しかも相当に長い。
意味がわからないので訝しげに花子を見てみれば、変わらず笑顔でこちらを見ている。こいつの笑顔は悪い予感しかしないのは、一緒に居て身に染みてわかったことのひとつだ。

「これでわたしを縛ってください。」

また酷い頭痛がした。



「ちょ、ちょっと髪の毛入れないで!あと縛りがきつい!」
「黙ってろよ。じだばたすんな!」
「もうちょっと綺麗に結んでよ〜これじゃただ巻きついてるだけじゃんか〜」

何故か、どうしてか俺は俺の部屋で花子にリボンを巻いていた。
「左近には、わたしをあげることにしました。だから三郎次にわたしをラッピングして欲しい。」とわけのわからないことを言って俺の部屋に(無理やり)ついてきたこのどうしようもないアホをどうしたらいいだろう。
解決策を色々考えてはみたが結局もう俺は色々諦めて、さっさと満足してもらって帰らせることにした。こいつにはエネルギーを使うだけ無駄なのだ。

「あー縦結びになってる!」
「我慢しろ。」
「我慢ってなに!?」

ぎゃあぎゃあやりあっていると家のインターホンが鳴った。だが今はそれどころじゃない。悪いが宅急便は後にしてくれ。それよりリボンの端はどこだ。絡まりを解かないとますます絡まっていく。俺は早くこいつを追い出さねばならないのだ。

「おい、大人しくしてろって言っただろ。絡まってしょうがないんだ。」

そういうと花子がぴたりと大人しくなった。最初からそうしてろよ。そうすればこんなに手間もかからないんだから。しかし、やけに素直だな。不審に思ってちらりと花子を見ると、その表情は凍り付いていた。俺は花子の視線の先をゆっくり辿る。いつの間にかリビングの戸は開いていた。

「三郎次、何してんの。」

そこには、ひどく冷たい目をした左近さまが立っていた。俺は思わずリボンから手を離して両手をあげた。ちょっと待て、これなんてホラー。

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