小説2 | ナノ

「クリスマスプレゼント?またギリギリの話だな。」
「お願い久作!アドバイスちょうだい!」

必死に懇願してみる。呆れたような顔をするところは一緒だけれど、そのあとぐだぐだ何も言わずに仕方ないと笑って考えてくれるから久作は三郎次とは違う。そうやって他の奴らが花子に甘いからわたしの甘えたを助長してしまっている、と評する三郎次の意見も耳が痛いのだが。
久作はいつものように顎に手を当てて、難しそうな顔で考え込んでいる。

「うーん俺もわかんないけど…普段身に着けるものがいいかなあ。時計とか。あーでも趣味があわなかったら困るか。」
「そっか…」
「でも、好きな奴からもらえばなんでも嬉しいんだよ。なに貰えるのかってワクワクもするし。そういうワクワク感っていうか、サプライズ感?がクリスマスプレゼントの醍醐味だと思うよ。要は結果よりも過程だな。」
「うーん、わかったようなわかってないような。」

すこし意外だった。久作は「これだ」と結論を出してくれそうな気がしていたから。
でもその結論は結局、左近のためのわたしのプレゼント、ではなくなってしまうということなんだろう。

「つまり花子の左近に喜んでほしいって気持ちが大事ってこと。」
「はい先生!ありがとう!」

いつ俺はお前の先生になったんだ。と真面目なツッコミを返すから、わたしは嬉しくなる。わたしの周りの安心が、わたしの甘えたを作ってしまうんだろう。ならみんなもそのぶんわたしに甘えてくれればいいんだ。
お前に甘えることなんかねえよ、と嘲笑う三郎次の声が聞こえた気がしたので、わたしは都合の悪い言葉をはねのけて久作ににっこり笑っておいた。


「うーん左近の喜ぶプレゼントかあ〜」
「しろちゃん心当たりある?」

何か困ったらしろちゃんに聞けば間違いない。とわたしは信じている。そんなんだからお前は(略)三郎次の聞き飽きたセリフはもう聞かない。

「左近って難しいところあるからね。心当たりがあるとすれば、花子ちゃんかなあ。」
「え?わたし?」
「うん。花子ちゃんが関連すると左近、すごく嬉しそうだから。」

にっこりと確信をもって言われてしまうと普段おちゃらけっぱなしのわたしも照れる。あえて視線を外して平静を装ってみるけど、たぶんしろちゃんは微笑ましいなあとか思っているから、なんか悔しい。

「え、そうかなあ…一緒に居てもいつもツンとしてて、嬉しさとか全く感じないんだけど…」
「素直じゃないのなんて、左近の性格考えればわかるでしょ。僕から見ればすぐわかるけどなあ、左近が花子ちゃん大好きなこと。」
「そ、そ、かな?」
「だからね、花子ちゃんの左近が好きだって気持ちを沢山こめれば、それで充分左近は嬉しいと思うよ。」

わたしは大きく頷いた。それならわたしにもできそうだ。左近の本当に今欲しいものはわからないけど、大好きな左近のためにわたしが何かすることが大事なのだ。さすがしろちゃん。久作もおんなじようなことを言ってくれたな。わたしのためにこんな素敵なアドバイスをしてくれて本当に、ありがたいと思う。
比べて三郎次ときたら、どうしてああもわかっていないんだろう。一番わたしとの付き合いが長いはずじゃないのか。まさかわたしと左近の関係を応援する気はないんじゃないだろうか…あれ…あり得る…付き合った初日、すごい勢いで睨みつけ「左近に何した」と凄みをかけてきたのは記憶に新しい。いや、いくらなんでもそのセリフ酷いよね?

TOP


×