小説2 | ナノ

まただ。またやっちまった。こうやって後悔するのも何度目だ。間違いを重ね続ける俺の学習能力のなさにはほとほとあきれる。
布団の上でうずくまり枕に顔を埋め先程の情景を、花子の下がり眉を思い出してはため息を吐く。気分が落ち込むことももう十二分にわかってるはずなのに繰り返した。俺は馬鹿だ。
ずっしりと腹に溜まった後悔がひどく重い。

またあいつに思ってもない、余計なきつい言葉を吐いた。今度こそ愛想をつかされてしまっただろうか。毎回毎回の今度こそがどんどん不安を増して大きくなっていって。そして言い訳さえ言語化できず不安の膨張を繰り返す。
別に構わない。そうあいつは言う。でも本当は構わないわけがないって、それくらいは学習能力のない俺だってわかるんだよ。


「あ、来た来た。」

いつも待ち合わせる屋根の上にやっぱり花子は居て、俺を見つけると笑った。馬鹿、笑うな。笑うなよ。俺を惨めにさせるな。ひとりで大人ぶるな。
でも荒んだ胸の奥、いつものあいつがいることに心底ほっとしてる俺が本当なんだ。優しくなる。思わず泣いてしまいそうなくらい、ぐにゃぐにゃになって弱くなる。

「…悪かった。」
「うん。いいよ、もう。」

それは諦めなのか。優しさなのか。俺ばかりが、甘えてないか。

「ほんとは良くないんだろ。」
「え?ううん?」
「俺ばっかり惨めみたいだ。」

どうしたの、と笑う優しさに甘えてまた俺は同じことを繰り返すんだろう。それでお前はいいのか。そして、そう問いただしたら、離れていってしまわないか。

「わたしは三郎次が、好きなんだよ。」

俺に向けてのばされた花子の手は、いつも優しくてぬくもりを宿している。悩み疲れて、俺はその手を今日もとる。愛してるの言葉も伝えられないまま、うやむやにする。惨めな気持ちを隠してしまう優しさが心地よすぎて、柔らかく不安を流していく。どれだけ俺を甘やかせば気がすむんだよ。無意識に口からこぼれでた言葉に、はにかんで花子はごめんと謝った。
でもどうか、俺から離れてだけはいかないでほしい。

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