小説2 | ナノ

わたしみたいな女のことを世間が一番に嫌うということは当然のごとく知っていました。そんなことはずっとずっと前から、わたしが恋というものを経験するまえから知っていたことです。それはあたりまえのこと、ヒトにきらわれるのが大嫌いなわたしにとっては常識中の常識であって、決してそれることのない一本道から遠く遠くはなれた山の中にありました。そんなものを望んだことなどありませんでしたし、恋を知らないわたしでさえそれを軽蔑していました。だってそれを選ぶことは、わたしのだいすきなぬるい世間から切り取られることを意味していたのですから。

わたしは、くりかえし、くりかえし、思い出しています。里に居る幼馴染の許嫁のことなど考える隙もないほどに。黒木くんは、慌てて言葉を紡ごうとするわたしを見て微笑んで、かわいいねと、言いました。

そうです。わたしはいまはじめて、だいすきなひとに出会うことの後悔を知ったのです。

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